2001 Fiscal Year Annual Research Report
極低温、超高純度パラ水素量子固体を用いた化学反応の新展開
Project/Area Number |
13640507
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮崎 哲郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90023126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 純 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (20303662)
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Keywords | エチルラジカル / 量子固体 / 再結合反応 / 極低温 / トンネル反応 / 固体パラ水素 / 高分解能ESR / H原子 |
Research Abstract |
1.極低温、超高分解ESRスペクトル 超高純度パラ水素は核スピンがなく、ESRスペクトルの線幅の原因となる磁気的相互作用がないので、ESR吸収線が鋭くなり高分解能ESR測定が出来ることを筆者が初めて提案した。超高純度パラ水素固体中において、C_2H_5ラジカルのESRスペクトルは23本の線スペクトルから成っている。スペクトルの温度依存性を調べた結果、CH_3基の内部回転のエネルギー障壁は5.3Kであることを明らかにした。今後、超高純度パラ水素固体を用いた超高分解ESR測定法により、極低温で存在するラジカルの精密な構造解析が可能となった。 2.相互作用のない媒体中の化学反応 真空中でH原子同志は再結合反応をしない。しかし、H_2分子等を存在させると、これらがエネルギー散逸の媒体となるのでH原子は再結合してH_2分子になる。この考えに基づけば固体H_2中では水素分子が多量に存在するので、H原子は容易に再結合してH_2になると予想される。しかし超高純度p-H_2中にH原子を生成すると、H原子同志はトンネル拡散により遭遇しても再結合しないことを発見した。固体p-H_2はH原子との相互作用がなく、再結合反応で生じるエネルギーの散逸媒体になり得ないためである。実際、スピン-格子緩和時間は超高純度パラ水素固体中では非常に長くなることからもわかる。このように超高純度パラ水素固体は、相互作用の面からみると真空のような不思議な物体であると言える。超高純度パラ水素固体を用いることにより、固相反応の新しい側面を切り開くことが出来ると思われる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Miyazaki et al.: "Controlling factors of tunneling reactions in solid hydrogen at very low temperature"Radiat.Phys.Chem.. 60. 381-387 (2001)
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[Publications] T.Miyazaki et al.: "ESR,ENDOR and ESEEM spectroscopy study on local structure and motion of reactants: Selective tunneling radical abstraction"J.Phys.Chem.. 105・14. 3652-3557 (2001)
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[Publications] T.Miyazaki et al.: "High-resolution ESR spectroscopy of ethyl radicals in solid ultra pure parahydrogen"J.Chem.Phys.. 114・22. 10024-10030 (2001)
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[Publications] T.Miyazaki et al.: "Resonance effect on tunneling reaction H+H_2→H_2+H in solid hydrogen"J.Low Temp.Phys.. 122・3. 265-277 (2001)
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[Publications] T.Miyazaki et al.: "Absence of recombination of neighboring H atoms in highly purified solid parahydrogen: ESR,ENDOR and ESE studies"J.Chem.Phys.. 116・3. 1109-1119 (2002)
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[Publications] T.Miyazaki et al.: "Large isotope effect on the tunneling chemical reaction"J.Nuclear Science Technology. (2002)