2001 Fiscal Year Annual Research Report
キラル反応場の複核化に基づく新規不斉合成反応の開発
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13640529
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宇梶 裕 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (80193853)
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Keywords | キラル反応場 / 複核化 / 酒石酸エステル / ニトロン / 不斉1,3-双極子付加環化反応 / イソオキサゾリジン / Reformatsky型試薬 / β-アミノ酸誘導体 |
Research Abstract |
環境破壊などの負の作用を伴わず、自然界に適合した人類の持続的発展のためには、新概念に基づく新規物質合成方法の確立が急務である。従来、金属一つを含む単核キラル反応場での反応が開発されてきたが、立体選択性が不充分である、触媒活性が低い、実現できない反応があるために多段階の反応を要する、などの諸問題が山積していた。本研究ではキラル反応場の複核化という新概念の基に、個々に特徴ある機能を有する金属複数を、配位機能を考慮しながら積極的に集積した複核キラル反応場を構築することにより、単独の金属を用いるだけでは実現不可能な新規不斉合成反応の開発を行なった。特に両鏡像体ともに入手可能な酒石酸エステルの活用を計り、精密な制御が可能な反応場の構築を試みた。 その結果、金属として亜鉛を用い、アミド置換基を有するニトロンの触媒的不斉1,3-双極子付加環化反応を行った結果、エチル亜鉛種とヨウ素から反応系内でヨウ化亜鉛種を発生させ、さらにピリジン-Ν-オキシドを添加剤として加えることにより、再現性良く反応を行なうことができた。特に、γ位に置換基を有するアリルアルコールへの付加環化反応では、レジオ、ジアステレオ、エナンチオ選択性の制御をほぼ完全に行なうことができ、対応する光学活性3,4,5-三置換イソオキサゾリジンを合成することができた。次に、新たにマグネシウム二つ、亜鉛一つを含む三核反応場を構築しReformatsky型試薬のイミンへの不斉求核付加反応を行なった結果、対応するβ-アミノ酸誘導体を高エナンチオ選択的に得ることに成功した。特に、水の添加が再現性良く高いエナンチオ選択性の実現に不可欠であるという、興味ある知見を得た。 以上のようにキラル反応場の複核化という概念は、立体化学の制御に極めて有効であることを、実証できた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] X. Ding, Y. Ukaji, S. Fujinami, K. Inomata: "Catalytic Asymmetric 1,3-Dipolar Cycloaddition of a Nitrone Bearing a Bulky Amide Moiety to g-Substituted Allylic Alcohols"Chem. Lett.. 2002(3). 302-303 (2002)
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[Publications] Y. Ukaji: "Creation of Multinucleating Chiral Reaction Field"J. Synth. Org. Chem. Jpn.. 59(5). 436-437 (2001)
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[Publications] X. Ding, K. Taniguchi, Y. Ukaji, K. Inom: "A Catalytic Asymmetric 1,3-Dipolar Cycloaddition of Nitrones to Allyl Alcohol"Chem. Lett.. 2001(5). 468-469 (2001)
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[Publications] S. Takkeuchi, Y. Ukaji, K. Inomata: "Asymmetric Bis(alkoxycarbonylation) Reaction of Terminal Olefins Catalyzed by Palladium in the Presence of Copper(I)Triflate and a Chiral Bioxazoline Ligand."Bull. Chem. Soc. Jpn.. 74(4). 955-958 (2001)
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[Publications] Y. Ukaji, S. Takenaka, Y. Horita, K. Inomata: "Asymmetric Addition of Reformatsky-Type Reagent to Imines Utilizing Diisopropyl Tartrate as a Chiral Auxiliary"Chem. Lett.. 2001(3). 254-255 (2001)