2001 Fiscal Year Annual Research Report
分子間水素結合を利用したカルボン酸誘導体の光反応の制御
Project/Area Number |
13640535
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
久保 恭男 島根大学, 総合理工学部, 教授 (40127486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白鳥 英雄 島根大学, 総合理工学部, 助手 (20325038)
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Keywords | 光化学反応 / 水素結合 / カルボン酸誘導体 / アルケン / 環化付加反応 / 反応制御 / 立体選択性 / 配向性の制御 |
Research Abstract |
分子間水素結合を利用した光反応制御の可能性を探るため,平成13年度は水酸基との水素結合を利用したカルボン酸誘導体の光反応制御に関して総合的に研究を行ったところ,次の知見が得られた。 1.カルボン酸誘導体としては,エステル類よりも酸無水物やイミド類において水酸基との分子間水素結合による光反応制御が特に効果的に働くことが明らかになった。さらに,溶媒ではベンゼンなど極性の低い溶媒を用いた場合に,また温度に関しては低温ほど,光反応の立体選択性の制御等がより効果的に行えた。また,1,8-ナフタルイミドの光反応系では,水酸基との分子間水素結合によって付加の立体選択性が制御されると同時に光反応性がかなり顕著に強められることが明らかになった。この水素結合による光付加反応の促進効果は,励起状態の反応性自体の変化という観点から興味深いと思われる。 2.芳香族イミド類の吸収スペクトルでは,アルコールの添加効果はほとんど認められなかった。しかし,ケイ光スペクトルでは,S_1(ππ^*)とS_2(nπ^*)のエネルギー差が大きなイミドの場合にはアルコールの添加によって最大発光波長は若干長波長シフトするものの,発光強度にそれほど大きな変化は認められなかったが,S_1(ππ^*)とS_2(nπ^*)のエネルギー差が小さな1,8-ナフタルイミドの場合には最大発光波長の長波長シフトと同時に,発光強度が大きく増加することが明らかになった。この結果より,S_1(ππ^*)とS_2(nπ^*)のエネルギー差が小さな芳香族イミドの系ほど,おそらく水素結合がS_2(nπ^*)のエネルギーにより大きな影響を与えるため,励起状態自体が水素結合の影響を受けやすいと考えられる。 以上の知見をもとに,平成14年度は,水酸基以外の官能基との分子間水素結合を利用した光反応系への展開等をはかり,合成化学的応用への可能性を探る。
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