2001 Fiscal Year Annual Research Report
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13640562
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
樋口 精一郎 長崎大学, 教育学部, 教授 (20011017)
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Keywords | 混合原子価状態 / ロタキサン錯体 / 二核錯体 / ルテニウム錯体 / ポリイン系スペーサー / シクロデキストリン / 電気化学 |
Research Abstract |
本研究は,ルテニウム複核錯体のポリイン系からなるスペーサー部分をシクロデキストリン(CD)などの絶縁物質で被覆することにより,どの程度外部環境物質との反応が抑制でき,混合原子価状態の安定性が増すかを明らかにするものである。本年度は,下記の成果を得た。 1) シクロデキストリンとスペーサー部分の疎水的相互作用を増すために,2,4-ペンタンジオナトキレート環の3位炭素にアルキンと芳香環(ベンゼン環あるいはチオフェン環)とを交互に配した長鎖共役系を有する新規(β-ジケトナト)ルテニウム単核錯体を2種類合成した。 2) 1)で得られた単核錯体の末端のエチニル基の酸化的カップリングにより新規複核錯体を2種類得た。これらは、FAB-MS,^1HNMR, IRおよび元素分析により同定した。また,シクロデキストリン存在下で同様の反応を行った結果,これらの複核錯体に極めて類似した可視吸収スペクトルを示す錯体を単離できたが,ロタキサン錯体としての同定には至っていない。 3) 2)で得られた複合スペーサーを含む複核錯体の電気化学測定をジクロロメタン中で白金電極を用いて行った。両錯体とも,近接した2段階の一電子酸化過程(Ru^<III>→Ru^<IV>)および還元過程(Ru^<III>→Ru^<II>)を示した。このことから,スペーサー内の芳香環が2つになると芳香環が1つの場合に比べ,ルテニウム(IV)-ルテニウム(III)混合原子価状態における金属間の相互作用は極めて小さくなることが明らかとなった。 4) 対照錯体の一つであるアルキン2つで繋がれた複核錯体の単結晶X線構造解析を行った。その結果,架橋配位子の2つのβ-ジケトンキレート環同士がほぼ直交した非常に珍しい構造を有することが明らかとなった。
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