2002 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチド錯体:加水分解酵素活性中心モチーフの合成・反応・アプサイジング
Project/Area Number |
13640565
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山村 剛士 東京理科大学, 理学部・化学, 教授 (00114702)
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Keywords | 加水分解酵素 / 活性中心モチーフ / ペプチド錯体 / 疎水性 / ディクソンプロット / プロトン解離基 / ミセル / 蛍光プローブ |
Research Abstract |
亜鉛加水分解酵素の反応機構については、亜鉛に配位した水酸基の存在が活性発現のもとであるとするメカニズムが確立されているが、活性を加速させるメカニズムや、活性が発現するpH領域のコントロールのメカニズムについては未だ定説がない。本研究計画は活性に及ぼすプロトン解離基の影響と疎水場の効果を明らかにすることを目的とし、申請書に示した計画に従って、1)加水分解酵素の内、Metzincin族の活性中心モチーフHis-Glu-X_2-His-X_2-Gly-X_2-Hisを有する13〜27残基数の種々のペプチドを5種類用意した(固相合成---39残基のものの合成には到らなかった)。2)それらペプチドのうち3種類についてZn^<2+>、Co^<2+>との錯形成をUV-vis.、CD、滴定、ポテンショメトリー、pH効果、質量分析、NMR、超遠心沈降平衡分析、EXAFS、検討した。これらの実験の結果、1)亜鉛ペプチドの活性の源泉は亜鉛ハイドロ木再度であることをペプチド系でも確認した。2)Co^<2+>はυ-hydroxo-υ-peroxo型2量体を形成するときに活性を示し、Zn^<2+>よりも活性が高かった。3)加水分解活性は疎水性が高いほど高かった。一方、水溶液での溶解度が減少してNMR、EXAFS等の実験が遂行できなかった。そのため有機溶媒との混合を行なわざるを得ず、系のpHの定義が不可能になった。4)そのため、疎水性の高いアミノ酸配列を持つ系をミセル中へ包埋する研究を新たに計画し、NBD-Fやトリプトファンなど蛍光プローブを導入した13残基のペプチドを2種類合成した。これらのペプチドについて、Zn^<2+>、Co^<2+>共存下アニオン、カチオン、両性、ノニオン界面活性剤への包埋条件を検討した結果、カチオン型界面活性剤が目的に合致することを見出した。 以上のように、本研究は申請書の計画内容と異なり、正確なpHが定義可能で且つ疎水場を作り出せるミセル系の探索を余儀なくされ、回り道を強いられることになったが、ほぼその探索に成功した。今後NMRを用いて諸官能基のプロトン解離平衡及び加水分解活性のpH依存性を改めて遂行する予定である。
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