2002 Fiscal Year Annual Research Report
超高感度紫外光電子分光による絶縁性有機材料およびその界面の電子構造の研究
Project/Area Number |
13640576
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石井 久夫 東北大学, 電気通信研究所, 助教授 (60232237)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 康男 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (40312673)
大内 幸雄 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60194081)
関 一彦 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (80124220)
|
Keywords | 紫外光電子分光 / セクシフェニル / 有機半導体 / 光電子収量分光 / 微少電流計 / 帯電 / キャリアトラップ / 雰囲気ガス効果 |
Research Abstract |
高感度の微少電流計を用いて本研究では、(1)阻止電位型エネルギー分析を改造し、高感度の紫外光電子分光測定を行い、有機半導体薄膜中に埋もれた金属クラスターがキャリアトラップとして帯電する現象を実験的に明らかにした、(2)光電子収量分光(PYS)を同一試料に対して真空中・大気中・特定ガス雰囲気下で行う測定法を考案・開発した。 (1)に関しては、具体的には金/セクシフェニル(6P)界面の測定を行った。この界面は、蒸着した金が6P薄膜内に潜り込み、微小クラスターを形成していることが指摘されており、光電子分光において大きなスペクトルシフトが観測されることが報告されていたがその原因はよくわかっていなかった。本研究において、試料電流を大幅に抑制した超高感度紫外光電子分光測定により、報告されているスペクトルシフトが埋もれた金クラスターの帯電現象によるものであることを解明した。この現象は、一般に、バンドギャップをもたない金属クラスターを広いバンドギャップを持つ膜中に埋め込むとキャリアトラップとして機能することを意味しており、有機半導体デバイス界面の新たな制御法として興味深い。 (2)に関しては、従来、特殊なイオン計数器を用いて大気中でPYS測定を行う装置が市販されているが、ダイナミックレンジが狭い、非常に高価である、測定が大気雰囲気下に限定されるといった問題があった。PYSは物質のイオン化ポテンシャルや価電子帯の上端の状態密度などを求めることができる測定法であり、有機デバイス開発における材料探索や、大気雰囲気下での物質や界面の電子構造を調べるのに有力な手法である。我々は、特殊な電極を用いて放出電子数を増幅し、微少電流計を用いて測定する手法を開発した。これにより、ダイナミックレンジの大幅な改善、大気でも真空でも特定ガス雰囲気でも測定できるようになった。これにより、有機半導体に対する雰囲気ガス効果の研究も可能になる。しかも、特殊なイオン検出器が不要なので安価に装置を作ることができる利点がある。 これらの結果に関しては、2つの国際学会、1つの国内学会で報告し、一部は静電気学会誌に執筆した。研究の主な内容に関しては、2編の論文を現在執筆中である。
|
Research Products
(1 results)