2001 Fiscal Year Annual Research Report
色素分子の構造変形を利用したスピン多重度変換分子システムの構築
Project/Area Number |
13640577
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 彰浩 京都大学, 工学研究科, 助手 (90293901)
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Keywords | スピン多重度変換 / テトラフェニルエチレン / ニトロキシド / 量子化学計算 / マクマリーカップリング / トリフェニルアミン |
Research Abstract |
スピン多重度変換分子システムの実現に向けて、本年度は量子化学計算を用いた分子設計、ならびにモデル分子の合成の検討を行った。テトラフェニルエチレンを基本骨格とし、そのフェニル基に(1)ニトロキシド部位と(2)分子全体の2電子酸化を容易にするジフェニルアミン部位をそれぞれ2つ導入したモデル分子の中性とジカチオン状態の構造最適化を行い、電子状態を調べた。その結果、中性状態に較べて、ジカチオン状態では中心のエチレン結合のねじれ角が増大し、ほぼ90度に近くなっていることがわかり、テトラフェニレンユニットは予想通り酸化還元により、その分子構造を大きく変えることがわかった。また中性状態の基底状態はスピン三重項であるのに対し、ジカチオン状態では一重項と三重項がほぼ縮退していることがわかった。以上の理論計算の結果を受けて、実際にモデル分子の合成を検討した。部分骨格(1)と(2)を含んだ非対称ベンゾフェノンの合成を行い、最終的にマクマリーカップリング反応を用いて、2種類のケトンからテトラフェニルエチレン骨格を合成する経路を調べた。現在は最終段階のマクマリーカップリング反応を行った後の反応生成物の同定を行っている。一方、目的化合物の酸化還元能に影響を与える部分骨格(2)から得られるある種のトリフェニルアミンの酸化還元能と酸化体のスピン多重度についても検討し、多量の酸化剤で処理することにより、高スピン種が発生することが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Akihiro Ito et al.: "Facile Synthesis, Crystal Structures, and High-Spin Cationic States of All-para-Brominated Oligo(N-phenyl-m-aniline)s"The Journal of Organic Chemistry. 67. 491-498 (2002)