2001 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性の創出機構としての染色体レベルの変異の役割
Project/Area Number |
13640629
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山内 淳 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (40270904)
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Keywords | 倍数体 / 3倍体ブリッジ / 3倍体ブロック / ミトコンドリアゲノム / 核ゲノム / 遺伝子の移行 |
Research Abstract |
染色体ゲノムの成立に関連する問題の中で、「倍数体化の進化プロセス」および「ミトコンドリアゲノムから核ゲノムへの遺伝子の移行」という2つの問題に焦点を当てて、その進化過程を記述する上での基礎となる差分方程式を記述した。 「倍数体化の進化プロセス」については、進化の途上で3倍体を経る「3倍体ブリッジ」が重要な意味を持っていると考えられてきたが、一方3倍体の適応度の低さが「3倍体ブロック」として機能してしまうという指摘もなされている。そこで、それらを取り入れた数理モデルを構築した。そのダイナミクスに、実際の植物に見られる倍数体の性質をパラメータとして与えると、倍数体化のプロセスには3倍体の単為発生が重要な役割を果たすことが予測された。この3倍体の単為発生は、3倍体の進化だけでなく4倍体の進化にも寄与しうることが分かった。 一方、「ミトコンドリアゲノムから核ゲノムへの遺伝子の移行」については、その過程はミトコンドリアと核の突然変異率の違いやミトコンドリアでのマラーのラチェットによる説明が試みられてきたが、そうした説明は不十分であった。オルガネラゲノムにはサイズを小さくするような淘汰圧が働いているのだという指摘もなされているが、その淘汰圧の働きは十分に解析されているわけではない。本研究では、その淘汰圧の役割を明らかにするために数理モデルを構築した。そのダイナミクスによって、オルガネラゲノムを小型化するような淘汰圧は、オルガネラが両親から子供に伝えられるようなシステムでのみ有効に機能することがわかった。また、いくつかの要因が遺伝子の移行の速度に影響を与えうることも示されつつある。
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