2002 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における協同的一妻多夫制の成立要因及びそこでの雌雄の繁殖戦術の解明
Project/Area Number |
13640635
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
幸田 正典 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70192052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗原 弘幸 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (80212249)
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Keywords | 婚姻形態 / 繁殖戦略 / 精子競争 / ランプロギーニ種 / タンガニイカ湖 / 雌の操作 / 繁殖戦術 / 協同的一妻多夫制 |
Research Abstract |
本年度は、ジュリドクロミストランスクリプタスの飼育実験を中心に行った。大型水槽で性比を一定(3雌:3雄)にし、雌雄ともに全長6cmの個体を用いた実験では、一夫一妻が3組形成された。このうち雄一個体を大型個体にした場合は、大型雄が巣を独占し、一夫三妻のハレムが形成された。逆に雌一個体を大型個体に換えた場合、一妻二夫が形成され、本種では、繁殖個体のサイズの違いだけでも、一夫一妻、一夫多妻、一妻多夫と多様な婚姻形態がもたらされることが確認された。飼育下で一妻多夫制が確認されたのは世界で初めてである。また、協同的一夫二妻制も確認された。この場合雌サイズは大幅に異なり、繁殖巣が小型雌の避難場所ともなることが確認され、これはランプロロギニ族魚類のカリノクロミスの協同的一妻多夫制で予想されている、成立要因と同様のものである。また、本種で協同的一妻多夫で大型のアルファー雄と小型のベータ雄の生殖腺を一夫一妻の雄のそれとの比較研究を行っている。実験は最終段階までには至っていないが、いくつかの資料から、協同的一妻多夫での雄間に精子競争が働き、雄の生殖腺指数は大きくなっていることが大いに期待される。この例は、雄は状況に応じ精巣への投資量を換えることをめいかくに示した魚類でおそらく初めての報告例となる。 また、カリノクロミスの飼育も開始しており、社会行動の基礎的な資料を得ることができた。なかでも雌による巣選択は、野外調査の結果と同様であり、このことは本種の協同的一妻多夫制が、雌の操作に基づくものであるとの仮説を支持している。また、協同的一妻多夫制の成立実験に必要な大型個体を得るまでには飼育に時間がかかるが、この雌の巣選択性は予測される成立要因の蓋然性を強く示唆するものである。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Takahashi D., Kohda M.: "Courtship in fast water currents by a male stream goby communicate the paternal quality honestly"Behavioral Ecology and Sociobiology. (in press). (2003)
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[Publications] Takahashi D., Kohda M.: "Female preferences for nest size in the stream goby Rhinogobius sp. DA"Zoological Science. 19. 1241-1244 (2002)
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[Publications] Matsumoto K., Kohda M.: "The effect of feeding habitats on dietary shifts during the growth in a benthophagous suction-feeding fish"Zoological Science. 19. 709-714 (2002)
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[Publications] Sunobe T.Munehara H.: "Mating system and kin relationship between adults and young in the shell-brooding cichlid fish Neolamprologus meeli in Lake Tanganyika"Journal of Ethology. 21(in press). (2003)
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[Publications] Munehara H., Sideleva V., Goto A.: "Mixed-species brooding between two Baikal sculpins, Paracottus kneri and Cottus kessleri : Field evidence for intra-and inter-specific competition"Journal of Fish Biology. 60. 981-988 (2002)
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[Publications] Hayakawa Y., Akiyama R., Munehara H., Komaru A.: "Dimorphic sperm influence semen distribution in a non-copulatory sculpin Hemilepidotus gilberti"Environmental Biology and Fishes. 65. 311-317 (2002)
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[Publications] 幸田正典: "魚類の社会行動2"海游舎. 210 (2003)