2001 Fiscal Year Annual Research Report
酵母β-1,6-グルカンのバイオジェネシスと細胞壁形成におけるその役割
Project/Area Number |
13640670
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
大隅 正子 日本女子大学, 理学部・物質生物科学科, 教授 (60060646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松影 昭夫 日本女子大学, 理学部・物質生物科学科, 教授 (90019571)
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Keywords | Schizosaccharomyces pombe / 細胞壁 / グルカン / 免疫電子顕微鏡法 |
Research Abstract |
本研究では、β-1,6-グルカン細胞内輸送経路および細胞壁における局在部位をS.pombeから調製して得た高分岐β-1,6-グルカンの抗体を用いて電子顕微鏡学的に解析し、以下の結果を得た。 1)S.pombeの細胞壁形成におけるβ-1,6-グルカンの動態の解析:(1)インタクト細胞における高分岐β-1,6-グルカンの動態を免疫電子顕微鏡学的に調べた結果、ゴルジ体にはその局在は認められなかったが、ゴルジ体の近傍や細胞膜直下の細胞質に認められた。以上の事実とこれまでにわれわれの得ている直鎖β-1,6-グルカンが、ゴルジ体に存在した結果と合わせると、細胞壁の構成成分のβ-1,6-グルカンは、細胞内で合成された後、分泌経路を経てゴルジ体を通過した後に、側鎖が付加されて、細胞外に分泌され、細胞膜を貫通して細胞壁を構築することが解析された。 2)S.pombeの細胞壁形成におけるα-1,3-グルカンの動態の解析:(1)α-1,3-グルカンはゴルジ体に局在することが認められた。これまでα-1,3-グルカンは細胞膜で合成・分泌されると考えられていたが、この物質は、低分子のα-1,3-グルカンを認識する特性があることから、低分子のα-1,3-グルカンが細胞内で合成され、分泌経路を経て徐々に糖鎖が付加され、細胞膜上の合成酵素により、高分子のα-1,3-グルカンに完成するとする新しい仮説が生まれた。(2)細胞壁の再生過程におけるα-1,3-グルカンは、3時間目のプロトプラストにおいて細胞膜上に分泌しており、グルカン微細繊維にも認められた。しかし、β-1,3-グルカンを示すコロイド金粒子の数より少なかった。 3)cell free系におけるβ-1,3-グルカンおよびα-1,3-グルカンの合成とグルカン繊維の形成の超微構造の解析:この解析にはα-1,3-グルカン合成酵素の変異株を用いてネガティブ染色法により検討した結果、野生株においては約16時間で200nm以上のリボン状のグルカン繊維が形成されたのに対して、変異株においては、わずかにリボン状の繊維を認めたが、大部分は基本繊維の状態のままであった。この事実は、細胞壁の骨格となるβ-1,3-グルカンの網目構造を形成するためには、α-1,3-グルカンの存在が必須であることを示した。
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[Publications] Tanaka, N., Osumi, M.et al.: "Characterization of a Schizosaccharomyces pombe mutant deficient in UDP-glactose transport activity"Yeast. 18. 903-914 (2001)
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[Publications] Shibasaki, S., Osumi, M.et al.: "Quantitative evaluation of the enhanced green fluorescent protein displayed on the cell surface of Saccharomyces cerevisiae by fluorometric and confocal laser scanning microscopic analys"Appl. Microbiol. Biotechnol.. 55. 471-475 (2001)
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[Publications] 大隅正子: "酵母細胞の新しい走査電子顕微鏡観察法-加圧凍結・極低温SEM法の誕生-"電子顕微鏡. 36. 108-110 (2001)
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[Publications] 大隅正子: 日本女子大学紀要理学部. 10(in press). (2002)
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[Publications] Osumi, M. et al.: "Biological Systems Under Extreme Conditions"Taniguchi, Y., Stanley, H.E., Ludwig, H.. 282 (2002)