2002 Fiscal Year Annual Research Report
メギ科イカリソウ属2種の交雑帯における生殖的隔離機構の解析
Project/Area Number |
13640691
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (60263985)
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Keywords | 交雑帯 / 生殖的隔離 / マイクロサテライトDNA / イカリソウ属 / メギ科 / 花粉管競争 |
Research Abstract |
メギ科イカリソウ属2種(トキワイカリソウとバイカイカリソウ)における交雑帯内での隔離現象を解析するため,超変異性マーカーであるDNAマイクロサテライトを用いて,人工交配の結果,得られた種子を遺伝的に解析した.トキワイカリソウおよびバイカイカリソウを種子親にして,花粉を混合した交配を行い,得られた種子の花粉親はどのようになるかを調べた結果,同種内交配が異種間交配よりは起きやすい傾向が見られた.この理由としては,受精時の胚のう細胞における選好的受精と花粉管伸張による競争の両方が考えられた. そこで,人工授粉を行って,花粉管伸張の速度について,同種間交配と異種間交配での比較を行った.受粉を行ってから観察までの時間を3段階に設定して観察したが,いずれの設定時間でも同種間交配と異種間交配では,花粉管伸張の長さには特定の強い傾向は見られなかった.したがって,バイカイカリソウとトキワイカリソウの2種間の隔離機構は,花粉管伸張によると考えるよりも,受精時の配偶子選択のほうが,効果をもっていると考えられる.ただし,花粉を混合した上での実験は不可能であるため(花粉の種間での違いを蛍光顕微鏡下でみわけるのは困難である),実際に野外の混生状態でも花粉管伸張の違いによる隔離が起きていないとは言い切れない. 前年に引き続き,日本産イカリソウ属の系統関係を明らかにすることを目的に,本年は核遺伝子の解析を主に行った.18S-26SリボゾーマルDNAのITS領域およびETS領域の塩基配列を決定し,分子系統樹を作成した.イカリソウ属では,これらの領域の変異がきわめて少なく,葉緑体DNA解析よりも得られた情報は少なかったが,バイカイカリソウとトキワイカリソウは異なるクレードに属すことが分かり,これら2種の交雑帯は2次的な接触の結果生じたものであるというこれまでの推察が補強された.
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