2002 Fiscal Year Annual Research Report
ユミヒゲザトウムシ種群における種分化,核型分化,ならびに交雑帯の性質の解明
Project/Area Number |
13640696
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
鶴崎 展巨 鳥取大学, 教育地域科学部, 教授 (00183872)
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Keywords | ザトウムシ / 種分化 / 染色体 / 地理的変異 / 中国地方 / クモガタ名綱 |
Research Abstract |
今年度は,ユミヒゲザトウムシ種群のうち,ヤマスベザトウムシLeiobunum mountanum(以下ヤマスベと略す)とヒライワスベザトウムシL.hiraiwaiの2種の核型の地理変異パターンの把握をめざした。主要な結果は次のとおりである: ヤマスベの染色体数は,鳥取県西部の大山地域から東部の智頭町の西部にかけての地域では2n=18,それ以東では2n=20〜22になる。ただし,2n=18核型の分布域である西部の烏ケ山新小屋峠付近で,2n=18の個体の他に,ロバートソン型相互転座によると推定される2n=19/20の個体(同一個体内モザイク)を混棲させる集団が新たに見つかった。一方,県東部の智頭町付近に存在が期待される2n=18/19/20の多型集団は,確認できなかった。新小屋峠の2n=18/19/20集団は,智頭町以東の2n=20〜22集団とは遠く離れており,この地域の2n=18の核型から独立に派生したと考えられる。 鳥取県東部の扇ノ山周辺には体の腹部が後方に著しく伸長した独特の体型をもつ集団(扇ノ山型)がみられるが,染色体数は2n=20で、核型も八東川の以西の若桜町〜智頭町の本種の集団(智頭型と仮称)が示す2n=20にきわめて近いことがわかった。ただし,智頭型では中部動原体となる第3染色体が,扇ノ山型では次中部動原体に変化していた。 一方,智頭型は,多くの集団では2n=20であるが,数カ所では2n=21や2n=22の個体が混在した多型集団となっていた。2n=22のみに固定した集団は見つからなかった。この2n=20/21/22の染色体数多型も,やはりロバートソン転座由来と推定された2n=20/21/22の多型集団の出現位置に特別な地理的まとまりが見られないことや,2n=22に固定した集団が見つからないことは,他のザトウムシに一般的にみられる染色体交雑帯の地理的パターンとは様相を異にしており,その成立理由には不明の点が多い。
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