2001 Fiscal Year Annual Research Report
カナワラビ属の種分化,特にシンガメオン構造に関する細胞学的・分子遺伝学的解明
Project/Area Number |
13640697
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高宮 正之 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (70179555)
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Keywords | シダ植物 / カナワラビ属 / 染色体 / 胞子 / アロザイム / 形態 / 種分化 |
Research Abstract |
コバノカナワラビArachniodes sporandosoraとホソバカナワラビA.aristataの形態的差異を明確にし、種間の遺伝的な類似性を調べることを目的に、染色体数、減数分裂の挙動、胞子稔性、アロザイム多型分析、外部形態の量的形質の調査を行った。染色体数は両種とも2n=82の二倍体で、減数分裂では正確に41個の二価染色体を形成し、胞子は良形で発芽率は80〜95%であった。8酵素11遺伝子座を用いたアロザイム多型分析の結果、11遺伝子座すべてに2〜6個の多型が得られた。Neiの遺伝的同一度(I)を求めると、コバノカナワラビ集団間ではI=0.9693〜0.9896、ホソバカナワラビ集団間ではI=0.9363〜0.9604であり、同一種内の集団間では遺伝的同一度が高かった。コバノカナワラビとホソバカナワラビの種間では、I=0.7680であった。この値は、既報告の温帯性シダ植物種間の値より高く、両種間の遺伝的文化程度は低いことが分かった。アロザイム多型分析を行なった全ての個体について形態の量的形質を測定したところ、頂羽片とその下の羽片とがなす角度と、最下羽片の第1小羽辺と第2小羽片の長さの比に2種間で大きな差があった。この2形質による散布図と全形態形質を用いた主成分分析の結果、コバノカナワラビとホソバカナワラビの個体はある程度のまとまりがみられ、量的形態形質のみから両種を区別できた。以上より、コバノカナワラビとホソバカナワラビの2種は、形態的には分化しているが、遺伝的分化程度が低いことがわかった。
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