2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640707
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 正信 国立科学博物館, 植物研究部, 主任研究官 (10189772)
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Keywords | 東アジア / コケ植物 / 種分化 / 高山 |
Research Abstract |
平成14年度は、8月に北陸の白山において、10月に中国雲南省の哀牢山において野外調査を実施した。両地域において、多くの周北極要素と東アジア要素の高山性コケ植物を調査することができた。中でも、中国雲南省の哀牢山においては、東ヒマラヤ及び中国西南部とメキシコからボリビアにかけての中南米に隔離分布する蘚類Pylaisia falcataの資料を入手することができた。 これらの調査では、現地で見られた高山性コケ植物の生育状況とその生育環境を記録するとともに、資料を収集した。資料はこれまでに入手した資料とともに、研究室で詳細な外部形態の観察を行うとともに分子系統解析を行った。その結果、いくつかの新知見を得た。例えば、蘚類のエゾノヒラツボゴケ属は周北極要素の高山性の種からなるが、これまでその所属について、サナダゴケ科とハイゴケ科に置く異なる見解があった。今回の分子系統解析の結果は、本属はサナダゴケ科に所属し、サナダゴケ科はサナダゴケ属と本属の2属からなることを支持した(Arikawa & Higuchi 2002)。また、東アジアの生物相の中心をなす日華区系区の西端にあたるパキスタンの蘚類について、これまでの記録を網羅するチェックリストを作成し、本地域の蘚類相の植物地理学的解析を行った。その結果、本地域には30タクサの東アジア要素が分布することが明らかになった(Higuchi & Nishimura 2003)。 なお、得られた資料は標本として保管するほか分子系統解析を行うために、ディープフリーザーで冷凍保存した。今回得られた資料の中では、中国雲南省の哀牢山は世界で最も生物多様性の高い地域の一つである中国西南部の横断山脈の南端に位置するため、本地域の高山性コケ植物の遺伝的解析に興味が持たれる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Arikawa, T., M.Higuchi: "Phylogenetic positions of the genera Isopterygiopsis and Herzogiella (Musci) based on rbc L gene sequences"Bryological Research. 8(5). 137-147 (2002)
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[Publications] Tsubota, H., T.Arikawa, H.Akiyama, E.de Luna, D.Gonzalez, M.Higuchi, H.Deguchi: "Molecular phylogeny of hypnobryalean mosses as inferred from a large-scale dataset of chloroplast rbsL, with special reference to the Hypnaceae and possibly related families"Hikobia. 13(4). 645-665 (2002)
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[Publications] Higuchi, M., N.Nishimura: "Mosses of Pakistan"J. Hattori Bot. Lab.. 93. 273-291 (2003)