2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640707
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Research Institution | NATIONAL SCIENCE MUSEUM |
Principal Investigator |
樋口 正信 国立科学博物館, 植物研究部, 室長 (10189772)
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Keywords | 東アジア / コケ植物 / 種分化 / 高山 |
Research Abstract |
平成16年度は、8月末から9月初めにかけて台湾東部で、国内では8月に北海道東部において野外調査を実施した。現地調査では、確認された高山性コケ植物の生育状況とその生育環境を記録するとともに、資料を収集した。資料はこれまでに入手した資料とともに、研究室で詳細な外部形態の観察を行うとともに分子系統解析を行った。また、得られた資料の一部は乾燥標本として保管するほか分子系統解析を行うために、ディープフリーザーで冷凍保存した。 これまでの研究の結果、いくつかの新知見を得た。例えば、東アジアの高山域に分布の中心をもつナンジャモンジャゴケは、形態的特徴からコケ植物の中で最も原始的な形質を有すると考えられており、その系統関係の探索が進められているが、依然不明である。今回、(1)台湾から新たに本種を発見した。(2)日本、台湾、ボルネオの集団間には遺伝的差異が見られないことを確認した。(3)さらに、他の蘚類では喪失したと考えられる葉緑体ゲノムを本種から確認した(Sugita et al.2004)。これはコケ植物の古いタイプが東アジアの高山帯に遺存していることを意味し、東アジアの高山帯フロラの特異性を示している。また、台湾と日本の蘚類フロラを比較検討した結果、両地域の高山域には周北極要素のほか、中国西南部との共通要素が特徴的に見られることが明らかになった(Higuchi2004)。さらに、高山性の稀産種であるイシヅチゴケとヒカリゴケを北海道東部で確認した(樋口2004)。なお、国際シンポジウム"International Symposium on Asian Plant Diversity and Systematics"において・ヒマラヤ地域で多様化した群である蘚類のCryptoleptodon属の種分化について発表した。
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Research Products
(4 results)