Research Abstract |
研究資料を収集するために,箱根山とマレーシアマレー半島,ボルネオ島において野外調査を行い,Aneuraceaeの資料を生品として持ち帰った,今年度は主に,スジゴケ属Riccardiaのsubgenus Hyaloneuraとsubgenus Corioneuraを観察した.その結果,Hyaloneuraの葉状体では,小さい油体が一つの細胞に多数含まれ,ミドリゼニゴケ属Aneuraの葉状体に見られる油体に酷似しているが,Corioneuraではまったく異なり,大きな油体が1細胞に一つしか含まれないことが分かり,改めてこの2亜属の独立性が示された,この過程で,これまで,R.canaliculataとされてきた中に別種と考えられるものが含まれる可能性が示され,検討課題として研究を進めている. また,スジゴケ属の中では,唯一油体が認められないミヤケテングサゴケに近縁と考えられる種をボルネオ島において発見した.日本産と比較したが,一致する形態は多いが,唯一細胞の大きさが異なり,検討中である.その他,これまで,ニューギニアからしか知らわていなかったスジゴケ属の種をボルネオ島において数種採集し,新たに油体を観察することができた.その結果,これまで,Riccardia graeffeiとされてきた種群には,2通りの油体が確認された.底地に生育する種は本種であると思われるが,高地に生育する種は油体が異なり,別種である可能性があり,この種の分類学的種概念を再検討する必要性が示唆された. 更に.ミドリゼニゴケ属Aneuraのおいて,葉状体の縁が不規則に切れ込み,あたかも無性芽的な構造をしており,葉状体の背面にも無性芽的な構造を有する種をボルネオ島において発見し,機知の種と比較検討を重ねている最中である.
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