Research Abstract |
鋼帯ばねはテレビカメラや医療器具の昇降,コンピュータの蓋の開閉,CDの出し入れなど,沢山の機構に利用されているが,厳密な特性解析は未だ成されておらず,簡単な線形理論によって大雑把に把握されているだけである。設計の指針にはほぼ50年前の考え方が未だに使われている現状を踏まえて,ばねの働きの精度を向上し,変形を正しく制御するためには,変形挙動の正確な把握が工業的に重要な課題であると思われる。したがって,本研究で対象とした鋼帯ばねの厳密な変形特性解析は極めて希少な解析例であると云える。そこで本年度は,鋼帯ばねについて,ある特定の直径を有するドラムに巻かれた薄板はりがフラットなはりに変形するとして,モデル化することを考え,さらに,フラットなはりになるときの負荷と変形量の非線形関係について,微分幾何学上厳密な式を適用することによって基本的な変形解析理論を導くこととした。なお,導かれた解析理論には複雑な数式が多数含まれ,その数式の計算処理には膨大な時間が必要であるため,本年度の基礎的研究では高速度,高性能科学技術計算ソフトを用いて計算を実行することによって,計算処理時間の大幅な短縮を目指すとともに計算結果をプロッターなどの出力機を利用して出力し,大変形状態のビジュアル化を図り,理論計算に基づく変形の様子を視覚的に把握できるようにした。また,導かれた解析理論の適用性を確かめるために,実際に変形実験を行う必要があるが,こうした実験には一般に市販されている材料試験機を使用することができず,実験に適合した新たな装置を考え出さなければならない。そこで,本年度は目的の変形試験を行い得る実験装置(試作装置1号機)を新たに製作した。さらに,以上の研究で得られた理論的,実験的解析結果,知見について,加入学会(機械学会,ばね技術研究会など)で研究成果の報告を行った。
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