直交周波数分割多重方式を用いた高速無線アクセス通信におけるスマートアンテナ技術

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13650407
• Research Institution: Nagoya Institute of Technology
• Principal Investigator: 菊間 信良 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (40195219)
• Keywords: 直交周波数多重分割方式 / 高速無線アクセス通信 / スマートアンテナ / アダプティブアレー / 最小2乗法 / 定包絡線化アルゴリズム / マルチキャリア / 遅延時間推定

Research Abstract

本研究は,ディジタルビームフォーマ(DBF)を基盤構成とした,次世代の直交周波数多重分割(OFDM)方式高速無線アクセス通信における高機能・高性能アンテナシステムについて研究開発するものである.本年度は,OFDM伝送方式において周波数選択性フェージングの克服と干渉の除去を行うアダプティブアレーまたはスマートアンテナを提案し,その特性解析を行った.具体的な成果を以下に示す.
1.参照信号切替方式LS-CMA(Least Squares Constant Modulus Algorithm)アダプティブアレーについて検討した.これはOFDM信号の周波数データを利用し,最小2乗法(MMSE)と定包絡線化アルゴリズム(CMA)とを切り替えることで,所望波1波を受信し,その他の波を抑圧するアルゴリズムである.これによって,MMSEの信号の誤捕捉を起こさず,収束が速いという利点と,CMAのブラインド処理が可能であるという制御上の利点を併せ持つことになる.また,演算量が比較的少ないので,移動体通信に向いていると言える.
2.次に,マルチキャリア既知包絡線アルゴリズム(MC-KMA:Multi-Carrier Known Modulus Algorithm)を用いたアダプティブアレーについて検討した.MC-KMAは,マルチキャリア信号からなる周波数データを利用するもので,所望波を含むOFDM信号のガードインターバル以内の到来波すべてを受信し,その他の波を抑圧するアルゴリズムである.ガードインターバル以内の波をすべて受信することによって,所望波の受信電力が上がるため,受信特性の向上が確認できた.
3.最後に,合成参照信号MMSEアダプティブアレーについて検討を行った.これは,上記二つの方式とは異なり,OFDM信号の時系列データを利用する.まず,所望波を含むガードインターバル以内の到来信号の遅延時間と振幅を推定し,それらを合成して参照信号をつくる.そして,この合成参照信号を用いたMMSE規範に基づいてシステムを動作させると,結果的にそれらの波をすべて受信し,その他の波(不要波)を抑圧する.参照信号の完成度が高ければもっとも効率的なアルゴリズムであることが示された.

Research Products

• [Publications] 黒田 徹: "正三角形アレーを用いた2D-ESPRIT到来方向推定と推定値ペアリング"電子情報通信学会論文誌. J84-B・8. 1505-1513 (2001)
• [Publications] 黒田忠晃: "再起型2D Unitary ESPRITを用いた到来方向推定"電子情報通信学会論文誌. J84-B・11. 1946-1954 (2001)
• [Publications] 堀 智: "OFDMにおけるガード区間を利用したMMSEアダプティブアレー"電子情報通信学会技術研究報告. 101・231. 13-18 (2001)
• [Publications] 堀 智: "OFDM用ガード区間MMSEアダプティブアレーの収束特性の改善"電子情報通信学会技術研究報告. 101・607. 37-44 (2002)
• [Publications] 服部智浩: "マルチキャリアKMAを用いたOFDM用アダプティブアレー"電子情報通信学会技術研究報告. 101・680. 45-50 (2002)
• [Publications] 余語厚文: "高周波における伝送線路の諸特性の測定と考察-電気情報工学実験指導上の工夫-"名古屋工業大学紀要. 53. 167-175 (2001)