2002 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期から近世に至る掘立棟持柱構造からの展開過程に関する形態史的研究
Project/Area Number |
13650696
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
土本 俊和 信州大学, 工学部, 教授 (60247327)
|
Keywords | 棟持柱 / 掘立 / 礎 / 軸部・小屋組構造 / 小屋 / 假家 / ウダツ / オダチ組 |
Research Abstract |
本研究は掘立棟持柱構造の歴史的な展開過程を国際的な視野のもとで実証的に考察する試みである。掘立棟特注構造とは、掘立の棟持柱が棟木を支える形で、先史・古代から中近世をへて現代の建造物にみられる。この形は梁行の中心柱が棟木を地面から支えるので軸部と小屋組が分離しない。この掘立棟持柱構造の具体的な事例を猟渉することを課題とする本研究は、本年度において、まず民家調査報告書から事例を悉皆的に捕捉した。得られた事例のうち、修理を通じて、棟持柱の上部が切り取られた後に接ぎ木される事例を浮き彫りにすることによって、棟持柱構造から軸部・小屋組構造への展開過程を実証した。かたや、本年度は掘立形式ではない棟持柱構造に注目した。その結果、土台にのる棟持柱構造の実例を、絵画史料と建築遺構と民家調査報告書を通じて、抽出した。この構造は、土地に定着した建物というより、原初的には仮設と移動を伴う建物に見られる一般的な姿であって、とりわけ小規模建造物によく見られたものと見通した。さらに、国際比較のために海外事例調査を進め、調査地域に韓国を選んだ。棟持柱構造をもつ建物はソウルを写した古写真のなかに散見されるとともに、韓国の農村部に散在する小規模な物置小屋などに散見された。この他、中国、台湾、ベトナム、ネパールといった東・東南アジアにおいても棟持柱構造の建物がみられることを確かめた。昨年度に実施した中央ヨーロッパの事例調査を踏まえたとき、掘立棟持柱構造をもつ建物がユーラシア大陸といった広がりとつながりにて、すこぶる長い歴史の中で展開してきたと想定することができる。なお、国内事例調査として、山梨県を選び、来年度への予備調査(外観とヒアリング)を行った。その結果、まさに16世紀末から17世紀前半に描かれた絵画史料に登場する掘立棟持柱構造の小規模建造物とそっくりの建築遺構を発見することができたのは大きな成果といえる。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 宇野浩生, 土本俊和, 笹川明: "佐渡、若狭能舞台の平面構成"日本建築学会計画系論文集. 554. 139-146 (2002)
-
[Publications] 内田健一, 土本俊和: "棟持柱構造から軸部・小屋組構造への転換過程"日本建築学会計画系論文集. 556. 313-320 (2002)
-
[Publications] 早見洋平, 土本俊和: "細川殿から御三間町へ-16世紀末・上京焼討後の都市形成-"日本建築学会計画系論文集. 562. 253-260 (2002)
-
[Publications] 宇野浩生, 土本俊和, 笹川明: "若狭能舞台の類型化と地域分布"日本建築学会計画系論文集. 563. 155-162 (2003)
-
[Publications] 早見洋平, 土本俊和: "16世紀末京都・上京における隣地境界線の生成過程"都市計画. 241. 99-111 (2003)
-
[Publications] 土本 俊和: "中近世都市形態史論"中央公論美術出版. 570 (2003)