2003 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期から近世に至る掘立棟持柱構造からの展開過程に関する形態史的研究
Project/Area Number |
13650696
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
土本 俊和 信州大学, 工学部, 教授 (60247327)
|
Keywords | 棟持柱 / 掘立柱 / 土台 / 小屋 / 町屋 / 市 / 京都 / 山梨県の民家 |
Research Abstract |
掘立棟持柱構造をもつ建造物の歴史的展開を考察した。掘立棟持柱構造とは、掘立の棟持柱が棟木を支える形式で、古代の伊勢神宮にみられたほか、中近世の小規模建造物にみられた。この形は、梁行の中心柱が棟木を地面から支えるので、軸部と小屋組が分離しない。対して、礎石建は、礎石の上にのる柱が梁と桁を支え、ほとんどの場合、その上に小屋組がのるので、軸部と小屋組が分離する。従来の研究は、軸部と小屋組が分離した後者を日本建築の支配的な形式とみなしてきた。今回、掘立棟持柱構造の具体的な事例を猟渉した上で、その記録と整理を行うことによって掘立棟持柱構造の展開を実証的に捕捉した。その結果えられた最大の成果は、中近世に連続性を確認した点であった。この成果とは対照的に従来の研究は、民家建築と社寺建築の展開過程に不連続面を指摘してきた。つまり、軸部と小屋組が分離した礎石建とされる近世民家はその小屋組がオダチ組か扠首組である。オダチ組は畿内と中心に中世後期からみられ、扠首組は戦国期から近世前期にかけて普及した。この二つに先立つ架構に掘立棟持柱構造があった。このとき民家は掘立棟持柱構造から礎石建構造へと変容したことになるが、その変遷に溝がある。他方、社寺建築の場合、式年遷宮制が120年間ほど途絶えた戦国期の伊勢神宮に溝がある。この期間を除いてほぼ正確に二十年ごとに造営を繰り返した伊勢神宮は、古代の建築形態を承け継いだといえる。しかし、古代からの技術を連綿と承け継いだとはいいがたい。このたび、通史を考える上で障害となる以上の不連続面を解消したのは、梁行二間の掘立棟持柱構造という形が日本建築史の小規模建造物において常にみられた一形式であったと帰結したことによる。かたや、掘立棟持柱構造はヨーロッパやアジアでも確認できた。木造軸組構造の祖型とその展開には世界的に通ずる普遍性があるといえる。この観点は今後の指針になる。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] TSUCHIMOTO, Toshikazu: "Making of the Japanese Timber-Framed Houses"Studies in Ancient Structures; Proceedings of the 2nd International Congress, Istanbul, Turkey. Volume1. 161-171 (2001)
-
[Publications] 内田健一, 土本俊和: "棟持柱構造から軸部・小屋組構造への転換過程"日本建築学会計画系論文集. 556. 313-320 (2002)
-
[Publications] TSUCHIMOTO, Toshikazu: "Small buildings facing on to the street in Seoul and Kyoto"Tama 2002: Traditional Architecture in modern Asia. 全1冊. 315-324 (2002)
-
[Publications] 早見洋平, 土本俊和: "細川殿から御三間町へ-16世紀末・上京焼討後の都市形成-"日本建築学会計画系論文集. 562. 253-260 (2002)
-
[Publications] 早見洋平, 土本俊和: "16世紀末京都上京における隣地境界線の生成過程"都市計画. 241. 99-111 (2003)
-
[Publications] 早見洋平, 土本俊和: "地割に先行する仮設と移設-16世紀末京都における隣地境界線の生成過程-"日本建築学会計画系論文集. 578. 219-226 (2004)
-
[Publications] 土本 俊和: "中近世都市形態史論"中央公論美術出版. 559(A4) (2003)