2002 Fiscal Year Annual Research Report
近世・近代京都における地価形成と土地取引に関する実証的研究-「沽券帳」などからみた家屋敷地売買の動向と町組織の関与の実態を通して-
Project/Area Number |
13650699
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
大場 修 京都府立大学, 人間環境学部, 教授 (20137128)
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Keywords | 京都 / 土地取引 / 地価 / 沽券帳 / 町中 / 家屋敷地 |
Research Abstract |
本研究は、京都の旧市街地を取り上げ、近世後期から近代における家屋敷地売買の動向について実態を把握し、不動産としての土地評価のメカニズムと地価の形成過程を実証的に明らかにすることを目的とした。そのために、「沽券帳」や土地取引の「証文」を可能な限り多数取り上げ、年代や地区、立地条件・家屋の状況などを含めたこれらの総合的な検討を通して土地取引の動向を捉え、土地評価の実態をはじめ、地価の萌芽的状況を明らかにすべく検討した。 その結果、町内の土地取引には町中が常に介在し、町人同士の取引は強い監視下にあったことを指摘するとともに、町中は実際に家屋敷を買い得することで、町内居住者の規制を通じ「町」の維持につとめていたことを示した。その関係からか、住人(家持人)の居住歴は総じて長く、安定した町居住の維持が図られていたことが推察された。出張地や地尻、裏宅地の取引も強く規制されていた。 近世京都の土地取引では、土地価格は総じて低く、逆に土蔵は高いことがわかり、土地取引において土蔵の有無と個数が重視されていたことを明らかにした。また、家の価格は、土地価格に対して2倍程度、土蔵は4〜5倍程度(享保12〜13年)に設定されていたのではないかと指摘した。 土地の価格は、奥行きに関係なく、また間口幅についても基本的な規模を基準にその倍数で判断されたと考えられた。土蔵に関しても、規模に関係なくその個数で換算されていたのではないかと考えた。さらにその取引価格は年代が異なると大きく変動することもわかった。また、家屋敷の売買価格は年代とともに上昇し、しかも売買価格は北低南高で、地域格差が認められた。しかし、大火後などは価格が下落したし、売買総銀高は、物価などの影響も認められた。
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