2003 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア・ルネサンス期の建築図面集における表現法と古代受容の特微に関する研究
Project/Area Number |
13650703
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Research Institution | Aichi Sangyo University |
Principal Investigator |
石川 清 愛知産業大学, 造形学部・建築学科, 教授 (40193271)
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Keywords | ルネサンス / 古代ローマ / 建築図面 / ウィトルウィウス / 建築理論書 / 都市景観図 / イタリア / 古代受容 |
Research Abstract |
ルネサンス期には古典復興を自らの時代形成のアイデンティティとした様々な重要でかつ荘厳な建築が数多く建設された。それらの建築のパトロンに建築家がその建築の設計意図を示すために、あるいはその建設現場において施工にあたる建設職人たちに建築家の設計詳細を提示するために、当然の何らかの媒体が必要であった。14世紀、15世紀前半のほとんどの建設現場では建築家が発注し、指物職人が制作した模型がその媒介となっていたが、15世紀後半以降、建築図面が徐々にその役割を占めるようになっていった。建築家の意思伝達の手段としてその重要性がありながらも、建築図面の使用の実態はなかなか把握できないという状況がある。本研究は現存するルネサンス期の建築図面集をその目的と機能(パトロンへの提示、建設職人への設計意図の伝達、古代遺構の手本帖)から分類し、それらの特性を把握し、さらに断片としての個々の設計・建設における建築図面をも含めた図面表現の相貌を、特に考古学的古代受容の方法の変遷と透視図法から正投影法へと至る立面表現の変化に着目して把握することを目的とした。 (1)ロンドンのジョン・ソーン美術館に所蔵されているいわゆる「北イタリアのアルバム」と称される透視図法で描かれた都市景観図を含む一連の図面集と、パリのルーヴル美術館のロスチャイルド・コレクションの中に現在ではバラされた牛皮紙の図面(inv.nos.841DR-860DRV)を解明し、(2)新しい建物の設計案としての図面ではなく、また古代の建築を正確に再現した図面でもない、古代ローマの遺構から見出した様々な用途の建築部分を合体させた架空の建物群を含む<空想建築>と分類できる図面群を解析し、(3)近年発見されたシモン・ホウフェ氏個人蔵である55図面からなる「ホウフェ・アルバム」とそこに描かれた主題と類似したメトロポリタン美術館に保管された図面を比較・検討することによって、シエナに15,16世紀に発展した大規模な書写工房の実態と、古代受容とその普及のメカニズムの一端を把握し、(4)ジュステイーナ・スカリアによって16世紀初頭の画家・技術者・建築家アントニオ・ダ・ファエンツァの作であると同定された122葉640図面をウイトルウイウス論の延長線上で論じた。 そこにはまさにルネサンス期に古代をどのように受容し、どのように再解釈したのかを知る手掛かりが内包されており、従来のルネサンス研究者の一般的解釈である古典復興というイメージ以上に、いかにルネサンス期当時の建築に古典が活かせるかを真剣に探っているさまをそこに読み取ることができた。最終年度である本年度はその成果を踏まえ、さらに同分類された図面間で影響関係を分析することによって図面表現の変遷を、コーナー手稿、ベルベリーに手稿、エスコリアル手稿など、ジュリアーノ・ダ・サンガッロー派を中心とする新しい透視図法から正投影図法への徐々に変化する流れの中に文脈化した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 石川 清: "フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロの宮廷と建築"地中海学会月報. 3. 5 (2004)
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[Publications] 石川 清: "中世後期イタリアの住居建築における上部張り出し構造(sporti)について"2003年イタリア中・近世史研究会報告書(富山大学). 1. 1-16 (2003)
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[Publications] 石川 清: "ミケロッツォ研究その後"地中海学会月報. 259. 5 (2003)
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[Publications] 石川 清: "世界の建築と町並みを巡る:イタリア・ギリシア編"エクスナレッジ. 207 (2003)