2002 Fiscal Year Annual Research Report
反射高速電子回折・電子分光法による窒化チタン薄膜の高機能化に関する研究
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13650730
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
粕壁 善隆 東北大学, 留学生センター, 助教授 (30194749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 豊 東北大学, 留学生センター, 教授 (60005402)
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Keywords | 窒素イオン注入 / 窒化チタン / hc-fcc構造変態 / 反射高速電子回折法 / オージェ電子分光法 / 透過電子顕微鏡法 / 電子エネルギー損失分光法 / 分子軌道法 |
Research Abstract |
窒化チタンの物性はチタンと窒素の組成比によって金属性から絶縁性に変わり、チタンと配位子である窒素との結合状態も変化する。この窒化チタンを次世代のデバイスに応用するには、組成とともに変わるチタンと配位子との結合状態を明らかにし制御する必要がある。本研究では、反射高速電子回折法によりその場観察のできる超高真空装置中で膜厚100nmのTi薄膜を作製し、その薄膜に窒素イオン(62keVのN_2^+)を注入して、窒化チタン薄膜の成長過程をオージェ電子分光法、電子エネルギー損分光法、透過電子顕微鏡法などを用いて明らかにする。Tiを蒸着した薄膜にはhcp-Tiの他にTiH_Xも成長していた。TiH_Xの窒化ではfcc-Ti副格子の四面体位置の水素が脱離し、fcc-Ti副格子の八面体位に侵入した窒素がTiと結合してTiN_yが成長した。水素の脱離は、プラズモンによる損失ピークの低エネルギー側へのシフトをもたらす。また、試料温度の上昇に伴って水素の脱離によるTiH_Xの格子数定の減少が起こり、試料温度350℃ではTiH_Xがhcp-Tiにすべて格子変態することも新たに見出された。一方、hcp-Tiを350℃まで加熱してもその格子定数に有意な変化は見られなかった。hcp-Tiの窒化では、hcp-Tiの局所的な原子配列を継承した変態によりできたfcc-Ti副格子の八面体位置に窒素が侵入し、TiN_yが成長した。プラズモンによる損失エネルギーを評価した結果、、TiN_yにおけるTi3dとN2p軌道の混成した結合性軌道からなる価電子帯の電子密度が注入量の増大に伴い増加することが分かった。これは結合に関わる窒素量が増大するためと考えられる。クラスターモデルの分子軌道計算により、Tiの窒化とともにTi-Tiの結合が急激に弱まり新たに強いTi-N結合ができることが分かった。これらのことから、窒化チタンの物性を制御し高度な機能性を持つようにするにはTi-Nの結合状態を考慮して設計したTiN_yの薄膜をプラズモン測定による評価を行いながら製作する必要があるという指針を得た。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Kasukabe: "In-situ Observation of Growth Processes of Transition Metal Nitride Thin Films by Nitrogen-Implantation"JAERI-Review. 2002-035. 203-205 (2002)
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[Publications] Y.Kasukabe: "In-situ Observation of Formation Processes of Titanium Compound Thin Films due to Ion Implantation in A Transmission Electron Microscope"Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B. (2003)