Research Abstract |
本年度は2年目となるので,本研究のアイディアの拡張が可能であるか検討する段階に入った。その1つとして,PbTiO_3-PbZrO_3-Pb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3系の焼結時の組成分布変化を検討した。この系に関して,まず,従来法である定圧焼結について検討を行った。焼結は典型的な挙動を示した。すでに我々のグループで開発してある3成分系固溶体の組成変動定量法を用い焼結時における組成分布変化を検討した。組成変動領域は,焼結温度2次元的に広がる組成変動領域を数値で表すためPbTiO_3-PbZrO_3組成方向の組成変動幅をΔx, Pb(Zr, Ti)O_3-Pb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3組成方向の変動幅をΔyとして,組成変動領域の焼結時における変化を追跡した。その結果,2成分系と同様,焼結により緻密化とともに組成変動幅がΔx,Δyともに減少することがわかった。一方,放電プラズマ焼結では,800℃数分でほぼ理論密度に達することがわかった。また,緻密化にともなう組成変動幅の変化はほとんどなかいことが明らかになった。これにより,3成分系固溶体においても組成の組み合わせによる特性の設計が可能であることが見いだされた。 放電プラズマ焼結は,加圧しつつ,加熱する点では従来のホットプレス法と変わらない。放電プラズマ焼結では,パルス電流を通じることのみが異なる。そこで,ホットプレスでの緻密化の際に組成変動幅がどのように変化するか検討した。その結果,ホットプレスでは,緻密化に伴い,組成分布幅が減少することがわかった。ただ,その減少傾向は,定圧焼結の傾向よりは小さく,この差は,加圧による焼結のためであると考えられた。これらを総合して考えると,放電プラズマ焼結法のみが,組成の組み合わせによる特性の組み合わせを可能にすることが明らかになった。 原料調製に関する研究では,過酸化亜鉛を前駆体とすることで酸化亜鉛のナノ粒子を合成できること,ペルオキシニオブ酸を用いることによりニオブ酸化物を調製し,それを用いて600℃という低温でニオブ酸カリウムを合成することができた。これらを出発原料とすることで,組成の組み合わせが容易になり,種々の新規な特性をもつ材料の開発が期待される。
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