2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13650882
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 智生 京都大学, 工学研究科, 助手 (50205944)
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Keywords | 表面プラズモン / 励起子 / 貴金属ナノ粒子 / J凝集体 / シアニン色素 / 銀ナノ粒子 / 金ナノ粒子 / 吸収スペクトル温度依存性 |
Research Abstract |
本研究は2年計画で、シアニン色素J凝集体と貴金属ナノ粒子が近接して配置された系を新たに構築し、その光吸収特性から励起子と表面プラズモンとの相互作用を明らかにすることを目的としている。励起子はJ凝集体中に、表面プラズモンは貴金属ナノ粒子中に励起される素励起である。本年度は以下に示すように、シアニン色素J凝集体・貴金属複合ナノ粒子構築法を確立し、その特異な光吸収特性を明らかにした。マイカ基板上にスパッタ蒸着した銀ナノ粒子表面をハロゲン化したのち、シアニン色素溶液に浸漬すると、銀ナノ粒子表面に色素J凝集体の単分子膜が形成されることを見出した。このJ凝集体・銀複合ナノ粒子の吸収スペクトルは、それぞれが別々にあるときの吸収スペクトルの単純和とはならず、J凝集体の光吸収波長で、銀ナノ粒子の吸収強度が減少することを見出した。このようなスペクトルの窪みは、J凝集体と貴金属ナノ粒子の組み合わせに特異的に出現することも明らかにした。また、今回購入した極低温冷凍機を利用して、極低温吸収スペクトル測定システムを組み上げ、J凝集体・貴金属複合ナノ粒子の特異な吸収スペクトルの温度特性の評価も行った。その結果、温度の低下とともに窪みピーク位置が大きくブルーシフトするものの、窪みの半値幅の低下は比較的少ないことが分かった。このような温度特性は、会合数の大きい均一なJ凝集体の励起子吸収帯に特徴的なものである。よって、この結果は、特異なスペクトルの窪みがJ凝集体の励起子に由来するものであることを示唆するとともに、小さな貴金属ナノ粒子上でも、十分に発達した均一なJ凝集体が形成されていることを強く示すものである。以上の結果より、J凝集体・貴金属複合ナノ粒子の特異な分光特性は、励起子と表面プラズモンとの抑制的相互作用により発現していると考えられた。
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