2001 Fiscal Year Annual Research Report
時分割誘電緩和測定による高分子ブレンドの相分離に伴う緩和挙動変化の追跡
Project/Area Number |
13650955
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浦川 理 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70273539)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 桂一郎 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00028226)
|
Keywords | 高分子ブレンド / モルフォロジー / 誘電緩和 / 相分離 / 界面 / α緩和 |
Research Abstract |
高分子ブレンドのモルフォロジーと物性の相関を系統的に理解するため、ブレンドの相分離過程を時分割誘電緩和測定により調べた。具体的には、下限臨界共溶温度を持つPolystyrene/Poly(vinyl methyl ether)(PS/PVME)ブレンド(PS/PVME=70/30,80/20)について、一相状態から温度ジャンプにより相分離を誘発し、誘電緩和測定を時系列で行った。相分離構造の顕微鏡観察から、これらの系では核形成と成長機構により相分離が進行していることがわかった。誘電緩和測定の結果は以下の通りである。今回の測定温度(相分離を誘発させた温度)で観察できたのはPSのセグメント運動に対応するα緩和であり、その時間変化をとらえることができた。まず温度ジャンプ直後からPSのαピークが低周波数側にシフトし、その後徐々にピークの高さが上昇した。ピークの低周波シフトについては、相分離によりPSセグメントのまわりのPS濃度が上昇し、摩擦係数が増加したためと考えられる。つまりガラス転移温度の高いPS成分が集まると、その部分の運動性が低下し、α緩和が低周波側にシフトするということである。また、ピーク高さの上昇の原因については、以下のように説明できる。セグメントの運動性という観点からPS分子は相分離界面近傍に存在する運動性の高い成分と、PS-richな相分離ドメインの中に存在する運動性の低い成分に分ける事ができる。そして今回観察したαピークは、ドメイン中に存在する遅いほうの成分からの応答である。相分離の進行に伴い、界面の面積が減少することで相対的にドメイン中に存在する割合が増加し、その結果ピーク高さ(緩和強度に比例)が上昇したと考えられる。 以上の結果から、誘電緩和測定が界面近傍と相ドメイン中に存在する分子を識別できる可能性があることがわかり、今後さらに詳細な検討を行うことで、様々な系への応用が期待できる。
|