2002 Fiscal Year Annual Research Report
時分割誘電緩和測定による高分子ブレンドの相分離に伴う緩和挙動変化の追跡
Project/Area Number |
13650955
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浦川 理 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70273539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 桂一郎 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00028226)
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Keywords | 高分子ブレンド / モルフォロジー / 誘電緩和 / 液晶 / Maxwell-Wagner |
Research Abstract |
高分子ブレンドのモルフォロジーと物性の相関を系統的に理解することを目的とし、いくつかの相分離系、および、各成分が分子レベルで均一に混合した、相溶ブレンドの誘電緩和測定を行った。今年度、主に検討したのは、ポリスチレン(PS)/4-ペンチル-4'-シアノビフェニル(5CB)ブレンドである。この系は、上限臨界共溶温度を持つ高分子/低分子液晶混合系であり、5CBの双極子能率がPSと比べ大きいため、誘電的には5CBの回転運動が(主に)観察される。 均一-相状態において、5CBの運動性を、PSの重量分率w_<ps>の関数として調べた。その結果w_<ps>の増加にともない、(1)5CBの緩和時間め低下、(2)見かけの活性化エネルギーの増加、(3)緩和時間分布の広幅化といった現象が観察された。(1)と(2)については、W_<ps>の増加によるガラス転移温度Tgの上昇が主な原因である。しかし、ガラス転移温度Tgにおいて、5CBは約10^<-4>sという早い緩和時間で運動していることがわかった。(一成分系の非晶物質の場合、通常10^2〜10^4s程度。)このことから、5CB分子がPSセグメントと非協同的に運動していることが示唆された。(3)に関しては、濃度ゆらぎの効果(濃度の不均一性)が一つの原因と考え、Fischerらにより提案されているモデルと比較検討したところ、実験結果は計算結果以上にブロードであることがわかった。 PS/5CBブレンドを、温度クエンチさせ、等方相/液晶相に相分離させた。このとき発現した相分離モルフォロジーは、液晶相がドロップレットとなる、海島構造であった。その相分離系の誘電緩和測定から、新しい(各成分に固有の緩和では説明不可能な)緩和過程が出現することを見いだし、これが相分離系に特有の、Maxwell-Wagner効果によると結論付けた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 浦川 理: "相溶性高分子ブレンドの誘電緩和:ポリビニルメチルエーテル/ポリスチレン系"高分子加工. 51・5. 10-17 (2002)
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[Publications] Hirose, Y.: "Dielectric Study on the Heterogeneous Dynamics of Misurble Polyisophere/Poly(vinyl ethylene) Blends : Estimation of the Relevant Length Scales for the Segmental Relaxation Dynamics"Macromolecules. (in press).