2003 Fiscal Year Annual Research Report
イネ葉身の毛性が光合成、蒸散および耐旱性に及ぼす影響
Project/Area Number |
13660013
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
和田 義春 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (80201268)
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Keywords | イネ / 光合成 / 蒸散 / 水利用効率 / 毛性 / 耐旱性 / 陸稲 / Oryza sativa L. |
Research Abstract |
陸稲長毛品種IRAT109と貧毛品種IRAT212を供試し,ポット栽培において断水処理を行い,長毛性品種が耐旱性が高いかどうか検討した.長毛性品種は貧毛性品種に比べ断水下での土壌水分の低下が遅く,断水処理7日目の葉身水ポテポテンシャルは長毛性品種では対照区と有意な差はなかったが,貧毛性品種では明らかに対照区より低下していた.浸透ポテンシャルは両品種とも対照区と有意な差は認められなかったので処理期間中には明らかな浸透調節は認められなかった.対照区の光合成,蒸散速度および拡散伝導度は貧毛品種IRAT212の方が高かったが,処理区では断水処理7日後にはIRAT212で大きく低下した.これらの結果から長毛品種は土壌に十分水がある場合の蒸散速度が低いことにより土壌乾燥が遅延し,水ストレスを受けにくいことが判った.次に,昨年度作出した長毛品種IRAT109と貧毛品種IRAT212の施逆交雑による雑種植物の光合成,蒸散速度と表皮構造(長毛密度と気孔密度)を調査した.正逆交雑による2種のF1雑種植物ともに光合成速度,蒸散速度,拡散伝導度ともに両親の中間か長毛品種IRAT109に近い値であった.F1植物の葉表皮の長毛密度は,向軸面,背軸面ともにほぼIRAT109と同程度であった.気孔密度は向軸面,背軸面ともに両親の間に大きな差異はなく,また2つのF1植物は,向軸面では両親よりもやや高い傾向を示したものの有意な差は認められなかった.これらの結果からIRAT109,IRAT212およびそのF1植物の光合成速度,蒸散速度,拡散伝導度の差異は主に毛性の差異に基づくものと考えられた.3年間の実験の結果,長毛性はイネの耐旱性を高める上で有用な形質であることが確認され,さらにこの形質は優勢に遺伝することが明らかになったので,今後陸稲の育種に利用すべく遺伝子群の探査,同定のためQTL解析などを進めていきたい.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 和田義春: "陸稲長毛品種IRAT109と貧毛品種IRAT212の断水処理による土壌水分,光合成,蒸散速度の変化"日本作物学会紀事. 72・別2号. 160-161 (2003)
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[Publications] 和田義春: "陸稲長毛品種IRAT109と貧毛品種IRAT212の正逆交雑によるF1植物の生育および光合成,蒸散速度"日本作物学会紀事. 72・別2号. 162-163 (2003)