2002 Fiscal Year Annual Research Report
イネ葉身の形態的特徴が、蒸散と水利用効率に及ぼす影響
Project/Area Number |
13660015
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 亮一 新潟大学, 農学部, 助教授 (60184701)
|
Keywords | イネ / 葉身傾斜角 / 蒸散 / 水利用効率 |
Research Abstract |
水稲の葉身傾斜角度が蒸散を含めた生理反応に及ぼす影響を知るために、人為的に葉身角度を調節した際の蒸散量・水利用効率の変化について検討した。 実験は新潟大学圃場のビニールハウス内で行った。水稲品種アキヒカリを用い、1/5000aワグネルポットに1株1本植えで湛水条件で栽培し、出穂日に葉身の傾斜角度を人為的に調節した。処理は葉身先端にクリップを貼り傾斜を大きくする垂れ葉処理と、支柱と麻紐で葉身を結束し傾斜を小さくする収束処理の2処理を行った。そこに無処理の対照区を加えた3区における蒸散量、乾物増加量、日中の葉身水ポテンシャルを測定した。測定期間は出穂日から約2週間とした。また各処理個体に5時から18時まで連続的に弱風をあて続ける送風処理を行い、蒸散量を測定した。 蒸散量は対照区で大きく、垂れ葉区、収束区の順に小さくなった。大気の蒸発要求量が大きい程、処理間の差違は大きくなった。各処理区の葉身水ポテンシャルは、最頂葉では収束区が他区と比較して有意に大きく、また下位の葉身でも収束区で大きい傾向があった。送風処理を行った個体では、対照区と垂れ葉区との蒸散量の差違はほぼ見られなくなり、また収束区との差違も小さくなった。葉面境界層抵抗は送風によって小さくなることが知られている。以上のことから直立した葉身や垂れている葉身は、葉面境界層抵抗が大きく、そのため蒸散量が小さいと考えられた。出穂後14日間の積算蒸散量と乾物増加量は対照区と比較して垂れ葉区および収束区でともに小さかった。しかし乾物増加量の処理間差は、積算蒸散量のそれより大きく、そのため水利用効率は垂れ葉区及び収束区で小さかった。以上のように、葉身の傾斜角度に応じて蒸散量は変化した。特に収束区の直立した葉身は蒸散量が小さく水ポテンシャルも高く維持されていたため、土壌水分欠乏に対する耐性力験いと推察された。
|
Research Products
(1 results)