2002 Fiscal Year Annual Research Report
麹菌のマルトース資化遺伝子クラスターの構造と機能及び発現制御機構
Project/Area Number |
13660074
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
五味 勝也 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (60302197)
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Keywords | 麹菌 / マルトース遺伝子クラスター / 遺伝子発現制御 / マルトース・パーミアーゼ / 遺伝子破壊 |
Research Abstract |
麹菌(Aspergillus oryzae)において、酵母マルトース資化遺伝子クラスター(MALクラスター)に高い相同性をもつクラスター中に存在する遺伝子の機能及び発現を解析した。クラスター中のマルトースパーミアーゼ遺伝子(malP)、菌体内マルターゼ遺伝子(malT)、および転写因子遺伝子と考えられるmalR遺伝子について、種々の炭素源における発現プロファイルを調べたところ、どの遺伝子もマルトース培地で発現が高かったが、グルコース培地でも発現が認められた。また、グリセロール培地ではmalT及びmalRはほとんど発現していなかったが、malPはグルコース培地と同じ程度の発現が認められ、3種類の遺伝子の発現様式が異なることが示された。一方、マルトースパーミアーゼ遺伝子(MAL61)を欠損した酵母にmalPを導入した結果、マルトース培地における生育が回復したことから、麹菌のmalP遺伝子はマルトース取込み活性を有することが示唆された。さらに、麹菌においてmalP遺伝子破壊株を作製し、デンプンやマルトースの資化能などの表現型を観察した。ところが、malP破壊株はマルトースを唯一の炭素源とする培地においても野生株と変らない生育を示した。これは、麹菌が菌体外にα-グルコシダーゼを常に発現し、マルトースをグルコースにまで分解しているためであると考えられた。そこで、malP破壊株にグルコアミラーゼ遺伝子プロモーターの制御下にある大腸菌β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を導入し、菌体内GUS活性を測定したところ、マルトースの存在下でのGUS活性はグルコース培地とほぼ同じとなり、マルトースの誘導活性が認められなくなった。アミラーゼ遺伝子の発現に関与する転写因子AmyRpの活性化が、MalPp欠損によりマルトースを菌体内に取込めなくなったために起こらなくなったものと考えられた。
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