2003 Fiscal Year Annual Research Report
転写制御系の変化の解析に基づく芳香族化合物代謝系オペロン造成機構の解明
Project/Area Number |
13660080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野尻 秀昭 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教授 (90272468)
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Keywords | 転写制御 / オペロン / car遺伝子群 / Pseudomonas / 芳香族化合物分解系 / 進化 / ダイオキシン / カルバゾール |
Research Abstract |
1.Pseudomonas resinovorans CA10株が有するcar_<CA10>遺伝子群の転写機構の解明 car_<CA10>オペロン([ORF9]carAaAaBaBbCAcAdD)の転写には少なくとも2つのプロモーター、アントラニル酸誘導性プロモーターP_<ant>と構成的プロモーターP_<carAa>が関与する。また、P_<ant>は本来アントラニル酸代謝に関わるantオペロンのプロモーターであり、ISPrelの転移によってORF9の上流にも存在する。本年度、antオペロン上流にコードされる2つのAraC/XylS familyの転写制御因子候補(ORF22,ORF23)のうち、ORF23産物がP_<ant>のアントラニル酸誘導的発現に必須であることが明らかになりAntRと命名した。この結果から、AntRはant遺伝子群上流、ORF9上流の2つのP_<ant>を介して、カルバゾールをカテコールにまで変換する酵素系全ての誘導的発現を制御することが示された。一方、P_<carAa>はcarAa開始コドン上流446〜406bpの領域に存在することが明らかとなり、更にP_<carAa>はσ^S依存性プロモーターであることが示唆された。以上より、CA10株のカルバゾール分解系においては、P_<carAa>から微弱に発現したcar遺伝子群産物がカルバゾールをアントラニル酸まで変換し、生じたアントラニル酸がP_<ant>からの強力な遺伝子発現を誘導する転写活性化サイクルが機能していることが明らかになった。 2.他のダイオキシン・カルバゾール分解菌が有するcar遺伝子群様遺伝子群の転写様式の解明 Janthinobacterium sp. J3株が有するcar_<J3>オペロン([ORFU13]carAaBaBbCAcAdD)はcar_<CA10>オペロンの祖先型であることが詳細な塩基配列の比較から推定されている。car_<J3>オペロンの転写には誘導性プロモーターと、P_<carAa>様の構成的プロモーターが関与することが明らかとなった。ORFU13開始コドン71bp上流に転写開始点が見出され、相当するプロモーターをP_<u13>と命名した。また、P_<u13>はcar_<J3>オペロンの上流逆向きにコードされるGntR familyの転写抑制因子CarR_<J3>によって制御されていた。更に、P_<u13>の誘導基質はカルバゾールの中間代謝物2-hydroxy-6-oxo-6-(2'-aminophenyl)-hexa-2,4-dienoateであることが明らかとなった。以上の結果から、car_<CA10>オペロンとcar_<J3>オペロンの転写制御因子は異なっており、car_<CA10>オペロンはISPre1の転移によってAntRの制御下にあるプロモーターP_<ant>を獲得した結果、一般的な生体物質であるアントラニル酸によって誘導されるようになったことが証明された。
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