2001 Fiscal Year Annual Research Report
脈翅目昆虫の共生細菌が産生する殺虫性蛋白質に関する基礎研究
Project/Area Number |
13660113
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
松田 一彦 近畿大学, 農学部, 助教授 (00199796)
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Keywords | Neuroptera / symbiont / insecticidal protein / GroEL / chaperonin |
Research Abstract |
アリジゴクと呼ばれる脈翅目昆虫の幼虫は,唾液(胃液)を獲物にまず注入して獲物の内部組織を消化した後,体液を吸汁する.筆者は,アリジゴクの唾液には強力な殺虫活性を示す蛋白質が含まれおり,これらが獲物を捕食する前に毒としてはたらいていること,そしてそれらがアリジゴク体内の微生物により生産されていることを発見した.本研究では,まずアリジゴクの一種であるクロコウスバカゲロウ幼虫体内の腹部(中腸)に共生し,殺虫性蛋白質を生産する微生物を探索した.その結果,殺虫性蛋白質を産生する微生物としてEnterobacter aerogenesを単離した.E. aerogenesは,嫌気条件で培養したときにのみ殺虫性蛋白質を生産し,その活性成分は熱ショック蛋白質の仲間であるシャペロニンであった.殺虫性シャペロニンは,数ngオーダーで各種の昆虫を瞬時麻痺させた.興味深いことに,本蛋白質は,GroELと同様にGroES蛋白質およびATP存在下,塩酸グアニジンで失活させた数種の酵素を回復させた.すなわち,筆者が見出したシャペロニンは,E. aerogenesから細胞外に放出されたとき昆虫毒としてはたらき,細胞内では変性した蛋白質のフォールディングを手助けしていることを見出した. また,クロコウスバカゲロウ幼虫およびヨツボシクサカゲロウ幼虫の大顎腺に潜み殺虫性蛋白質を生産する微生物を探索した.その結果,どちらの昆虫種からも殺虫性蛋白質を生産する微生物としてBacillus属の細菌を単離した.とくに,クロコウスバカゲロウ幼虫の大顎腺から単離した細菌は,分子量約70Kの蛋白質を生産することを見出した.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] N.Yoshida, K.Oeda, T.Mikami, Y.Fukita, K.Nishumura, K.Komai, K.Matsuda: "Chaperonin turned insect toxin"Nature. 411. 44 (2001)
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[Publications] K.Matsuda, S.D.Buckingham, D.Kleier, J.J.Rauh, M.Grauso, D.B.Sattelle: "Neonicotinoids : insecticides acting on insect nicotinic acetylcholine receptors"Trends in Pharmacological Sciences. 22. 573-580 (2002)