2002 Fiscal Year Annual Research Report
真骨魚類の仔魚期から稚魚期への移行期における活動度の上昇と共食いの関係
Project/Area Number |
13660184
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
及川 信 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (10175234)
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Keywords | 共食い / 鰓(えら) / 偽鰓(ぎさい) / 視覚 / 酸素消費量 / 同調的形態形成 |
Research Abstract |
トラブグは成長の過程で体重がおよそ10mgと100mgに達する頃に酸素消費量が急上昇し、これらの上昇に対応して共食い行動が激化することが示唆されている。本研究では、鰓の発達(形態)が酸素消費量の上昇(生理)と共食い行動の激化(生態)に同調しているかどうかを検討した。 艀化後0日齢(体重0.61mg)から38日齢(250mg)までのトラフグ24個体の体表面積A_B、鰭面積A_F、ならびに鰓面積AGを測定した。いずれの測定もカメラルシダを装着した実態顕微鏡でトレースした図について行った。体表面積は体の10か所で測定した体高と体幅から算出した。鰭面積はプラニメーターで測定した。鰓面積はA_G=(総鰓弁長)×(二次鰓弁密度×2)×(二次鰓弁両面の平均面積)の式から求めた。 生活史の初期には鰓は未分化であった。鰓弁上の二次鰓弁は最初に0.7mg(3日齢)の仔魚で第二鰓弓後側と第三鰓弓前側の鰓弁に生じた。その後、第一鰓弓後側と第二鰓弓前側、第三鰓弓後側の順に生じた。最後に6.2mgの仔魚で第一鰓弓前側の鰓弁と偽鰓に二次鯛弁が生じ、稚魚期に移行した8mgの個体において鰓と偽鰓は完成していた。単位体重当り鰓面積A_G/W(mm^2/g)と体重W(g)の関係は、0.7-2mgではA_G/W=3.66×10^<10>W^<2.930>、2-7mgでは91800W^<0.919>に従い体重増大に伴い急増し、7-40mgでは909W^<0.008>に従い体重に拘らずほぼ一定で、その後120mgまで3280W^<0.403>に従い再び増大した。眼の脈絡膜には、第一鰓弓で酸素化された血液が偽鰓を通過した後に供給されるので、第一鰓弓の鰓と偽鰓の完成は視覚の発達と密接に関係していると考えられる。最初の共食い行動を開始する魚の体重はおよそ8mgで、この体重では鰓と偽鰓は完成した直後であった。2回目の共食い行動を開始する魚の体重はおよそ100mgであり、この体重付近までA_G/Wは増大した。以上の結果は、鯛と偽鰓が酸素消費量の上昇と共食い行動に同調して発達していることを示すと考えられる。
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