Research Abstract |
有明海は、ノリや貝類を始めとする海産物が豊富にとれ、中でも養殖ノリは、毎年全国1,2位の生産高を誇り、佐賀県の基幹産業の一つとなっているが、養殖現場においては毎年養殖ノリの病害、赤腐れ病が発生し、時にはノリ養殖業の健全経営に支障をきたすこともあり問題となっている。 我々はノリ赤腐れ病を引き起こす真菌ピシウム菌に対する抗真菌性遺伝子を導入した耐病性ノリ種苗を確立を試みており、耐病性遺伝子の導入にあたりその操作の簡便化にノリプロトプラストの作出が重要な鍵となっている。しかしながら,ノリプロトプラストの作出に際し,現在のところ安価で効率良くノリプロトプラストを作出する酵素は市販されていない。 そこで本年度の研究では,当研究室で分離・保存している海洋細菌の中から,最もノリ細胞壁分解能が強いPseudomonas sp. ND137株を供試して、同菌の産生するノリ細胞壁構成多糖分解酵素の検索を行うと共に,ノリプロトプラスト作出に関連性の示されたノリ細胞壁構成多糖分解酵素について,それらの遺伝子の発現クローニング並びに遺伝子の解祈を行い,得られた各組換え体粗酵素を用いたノリプロトプラストの作出について検討を行った。 その結果、供試菌のゲノムライブラリーから同菌が産生する各多糖分解酵素の発現クローニングにより,4種の関連酵素を見出し、ポルフィラナーゼA(AAGA),β-1,4-マンナナーゼA(AMNA),β-1,3-キシラナーゼB(AXNB),β-1,4-キシラナーゼA(AXNA)およびセルラーゼA(ACLA)遺伝子のOpen Reading Frameは,それぞれ1,326bp(441aa),1,299bp(432aa),2,454bp(817aa),1,041bp(346aa)および1,758bp(585aa)であることが明らかとなった。また、各遺伝子の推定アミノ酸配列のホモロジーおよびモチーフ検索を行った結果,AAGA, AMNA, AXNB, AXNAおよびACLAは,それぞれ糖質加水分解酵素ファミリー16, 5, 26, 11および5に属することが明らかとなった。さらに,得られた各多糖分解陽性大腸菌クローンから調製した粗酵素を用いてノリプロトプラストの作出試験を行った結果,ポルフィラナーゼ,β-1,4-マンナナーゼおよびβ-1,3-キシラナーゼがノリプロトプラスト作出に重要な酵素であることが示唆された。
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