2003 Fiscal Year Annual Research Report
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13660199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 勝子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (30092381)
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Keywords | 水生動物 / フグ類 / トラフグ / ヒガンフグ / クサフグ / コモンフグ / D-アラニン / L-アラニン |
Research Abstract |
申請者はこれまでに軟体動物の巻貝の諸組織にアラニンラセマーゼ(ARase)が存在し、いずれの動物でもD→LとL→Dの両方向に活性を示し、同じ軟体動物のイカ・タコ類ではL→Dの一方向のみに活性を示すことを明らかにした。本年度はイカ・タコ類と同様に体内にD-アラニン(D-Ala)を多量に蓄積するエビ・カニ類を捕食し、しかも遊離のD-Alaがほとんど存在しないフグ類におけるARase活性の有無を調べることとした。 養殖中のトラフグ、クサフグ、ヒガンフグ、コモンフグを即殺し、それぞれの組織からリン酸緩衝液(pH7.4)を用いて粗酵素液を調製した。基質として反応液の終濃度が20mMとなるようにD-およびL-Alaを加えて37℃で0、1、3および5時間酵素反応を行った。 1.クサフグの肝臓ではL→D方向でいずれの時点でもD-Alaの生成は認められなかったが、D→L方向では1時間後に明瞭にL-Alaの生成が認められ、反応液中のL-Ala濃度は8.4μMとなった。時間経過に伴いL-Ala濃度は増加し、3時間後に15.0μM、5時間後に25.3μMとなった。 2.ヒガンフグ肝臓でもクサフグと同様にL→D方向でいずれの時点でもD-Alaの生成は認められなかったが、D→L方向では1時間後に明瞭にL-Alaの生成が認められ、反応液中のL-Ala濃度は4.6μMとなった。3時間後の増加は認められなかったが、5時間後にやや高濃度となった。 3.トラフグ、コモンフグでもクサフグおよびヒガンフグとまったく同様であったが、いずれも活性は前2種より低かった。 4.卵巣についてはトラフグとクサフグについて調べたが、トラフグでは両方向で活性は認められず、クサフグのL→D方向でいずれの時点でもD-Alaの生成は認められた。 以上の結果からD-Alaが存在しないフグ類にもARase活性が認められ、その活性はイカ・タコ類と同様にD→L方向にのみ示される特異なARaseであることがわかった。このことから、これらの動物種ではこの酵素作用により体内に取り込まれたD-AlaをL-Alaに変換して利用しているものと考えられる。
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