2001 Fiscal Year Annual Research Report
ホタテガイにおける麻痺性貝毒のチオールとの反応性に基づく代謝に関する研究
Project/Area Number |
13660207
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐藤 繁 北里大学, 水産学部, 助教授 (20170748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 武比古 北里大学, 水産学部, 教授 (00104521)
児玉 正昭 北里大学, 水産学部, 教授 (40050588)
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Keywords | 麻痺性貝毒 / グルタチオン / γGTP / 分解 / ホタテガイ / ゴニオトキシン / サキシトキシン |
Research Abstract |
Alexandrium属等の渦鞭毛藻が発生すると二枚貝が麻痺性貝毒(PSP)により毒化する。貝に取り込まれた毒の代謝に関してはほとんど知見がない。筆者らは最近、in vitroでゴニオトキシン(GTX)群等の11位に硫酸エステルを持つPSP成分が還元型グルタチオン(GSH)などのチオールと複合体(GS-STXs)を形成し、さらに過剰のチオールによりサキシトキシン(STX)群に還元されることを報告した。この結果は同様の反応が毒化貝の体内で起きていることを示唆する。本研究は貝に蓄積した毒の代謝を生体内チオールとの関連で検討したものである。 種々の貝類の肝膵臓のGSH濃度を測定し2mM前後の値を得た。同レベルのGSHを含む中性水溶液中で100μMのGTX2,3平衡混合物を37℃で加温したところ、2日間で大部分がGS-STX複合体およびSTXに変換することを確認した。抽出時の試料由来の酵素による影響を考慮しつつ毒化ホタテガイ抽出物中のGS-STXの確認を試みたが、同複合体およびGSH以外のチオールとの複合体をほとんど認めることが出来なかった。この結果は毒化貝体内で形成されたGS-STXが貝の体内でさらに分解されることを意味する。このことはGS-STXがホタテガイ肝膵臓の膜タンパク画分により分解されること、この活性がセリン-ホウ酸緩衝液中で阻害されること、および中腸腺と同レベルのウシ製γGTP溶液中でGS-STXが速やかに分解されることから確認された。PSPにチオールが結合した複合体は通常、メルカプトエタノール溶液中で加熱すると定量的にSTXを遊離する。しかしGS-STX複合体のγGTP分解物は同処理でSTXをほとんど遊離せず、複数のプリン体と思われる蛍光物質を与えた。以上からPSPが貝の体内でGSHとγGTPにより構造変化を伴う変換を受けることが明らかとなった。
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