イギリスにおける田園空間の公共化過程―田園アクセス権の成立過程を中心に―

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13660214
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 岩本 純明 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40117479)
• Keywords: 田園アクセス権 / 国立公園法 / 田園レクリエーション / 農村ツーリズム / 入浜権 / 環境権

Research Abstract

基本資料の収集を日本国内で継続するとともに、イギリスで収集した資料の分析を継続した。
日本国内での資料収集は、田園アクセス権と共通の性格を有する入浜権に関する資料を、入浜権運動が展開された兵庫県を対象に行った。兵庫県立図書館で関連資料を収集するとともに、入浜権運動を担った組織の責任者を訪問し、機関誌や報告書など一次資料を収集した。また都市近郊に立地し、エコツールズムの可能性のある秦野市で、関連調査を実施した。
本年度の主な知見は以下の如くである。
(1)イギリスにおける田園アクセス権は、主として道路の通行権に関わる線的アクセス権と地域全体をカバーする面的アクセス権の2種類からなる。この権利は、1949年公布の「国立公園及び田園アクセス法」によって公的に確立したが、アクセス権の設定にかかわる要件については必ずしも明確でなく、地主との協議によるケースも多かったので、実際の運用は土地所有者団体やアクセス団体による影響力の行使が必要だった。
(2)アクセス権の行使過程では、国立公園協議会(CNP)のリーダーシップが重要であった。
(3)日本では入浜権訴訟がイギリスにおけるアクセス権運動と同種の性格を持つ運動であった。しかし、入浜権が明確な公的権利として確立するには至っていない。環境権と同様、公共信託理論による法的基礎づけが有力であるが、こうした権利が社会的にどう認知されて行くべきかを、土地あるいは自然物の所有観念の特質とあわせて今後検討するよていである。