2003 Fiscal Year Annual Research Report
中国の21世紀をみすえた農村制度改革―ミクロ・データの分析―
Project/Area Number |
13660220
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
浅見 淳之 京都大学, 農学研究科, 助教授 (60184157)
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Keywords | パネルデータ / 双層経営体制 / 村経営能力 / 農家経営能力 / 以工補農 / 利潤関数 / 一元配置固定効果推定 / 二元配置固定効果推定 |
Research Abstract |
2003年度は、現地調査の結果も踏まえながら、中国農業部農村経済研究センターの農家固定観察点ミクロデータを用いたパネルデータ分析の総括的な研究を行なった。中国農村の「双層経営体制」のもとでの「村集団経営能力」と「農家経営能力」の関係を、理論的、計量経済学的に分析した。双層経営体制のもとでは次のような問題が引き起こされる。貧困村の場合は村経営能力がなく農家経営能力の発揮によってのみ、農業経営が発展することになる。郷鎮企業などで裕福になった富裕村の場合は、「以工補農」という形で農業において村経営能力が発揮される。村経営能力の発揮は均等的な社会サービスとして提供されており、逆に経営能力のある農家のインセンティブをなくしてしまい、農家経営能力が発揮できない状況をもたらしてしまうのである。この制度上の問題をパネル分析によって実証的に明らかにした。 利潤関数の定数項は農家や村が特異的にもつ経営能力と解釈できる。一元配置固定効果推定によって利潤関数を計測し、固定効果がある場合に経営能力があると判断できる。また二元配置固定効果推定による計測によってさらに、時間とは別の本源的な経営能力の格差を、固定効果を判断することによって検証できる。固定観察点調査のパネルデータを用いて、固定効果による経営能力の検証を行った。その結果、中国の村と農家には経営能力が特異的に形成されていることが検証された。農家はさらに、時間とは別の本源的な経営能力を持っていることも検証された。しかし、「以工補農」によって村サービスが供給されると、その平等的な提供のされ方で農家個々の経営能力はかえって発揮されなくなってしまうという、制度上の問題も検証することができた。
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Research Products
(2 results)