2001 Fiscal Year Annual Research Report
フィチン態リン酸を低くし、有効態リン酸を高めた飼料作物の開発
Project/Area Number |
13660268
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
実岡 寛文 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (70162518)
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Keywords | フィチン / エンバク / 環境汚染 / myo-inositol1 phosphate synthase / リン酸 / 資料作物 |
Research Abstract |
家畜飼料に利用されている穀実には乾物あたり0.4〜1.0%のリン酸が含まれ、その約65〜80%がフィチン態リン酸(myo-inositol 1,2,3,4,5,6-hexakisphosphate)である。豚、鶏などの非反芻家畜は無機リン酸は消化・吸収できるが、フィチン酸は消化・吸収できないため大量のリン酸が糞として排泄されている。家畜のリン吸収利用効率を高めるために、農家では飼料にリン酸Caなどの無機リン酸を添加しているが、原料の隣鉱石は50〜100年で枯渇すると予想されている。リン酸の有効利用を図るためには、子実のフィチン酸を減らすことが重要な課題であるが、子実におけるフィチン酸生合成機構はまだ明らかにされていない。フィチン酸は,初期酵素としてmyo-inositol 1 phosphate synthase(MIPS)により触媒され合成される。そこで,本研究ではフィチン酸合成酵素のMIPS遺伝子をクローニングし,種子成熟過程にともなうMIPS遺伝子の発現様式からフィチン酸生合成機構を明らかにした。エンバク開花1週間目の未熟種子からmRNAを調製し,これを鋳型としてRT-PCRを行いエンバクMIPScDNAのクローニングを行った。エンバクMIPScDNAの塩基長は1936bpで,510のアミノ酸をコードし,アラビドプシスなどの他の植物のMIPS遺伝子と相同性が高く,さらに目的としている遺伝子とホモロジーが高かった(DDBJ : AB059557)。MIPSmRNAは種子で発現が見られたが,茎や葉では発現しなかった。MIPSmRNAレベルは開花日で小さく,10日目で最も高かったが,その後発現レベルは減少した。MIP濃度もmRNA発現の変動パターンと同様であった。フィチン態P濃度は開花30日目に急激に増加し,MIPS遺伝子の発現より20日遅れて集積し始めた。以上の結果から子実におけるフィチンの合成は子実成熟初期のMIPSにより制御されていると推察された。
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