2002 Fiscal Year Annual Research Report
フィチン態リン酸を低くし、有効態リン酸を高めた飼料作物の開発
Project/Area Number |
13660268
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
実岡 寛文 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (70162518)
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Keywords | ダイズ / フィチン酸 / エンバク / myo-inositol 1 phospahte synthase |
Research Abstract |
家畜の飼料原料には多量の植物性穀実が使用されている。そのリン酸濃度は乾物当たりO.4〜1.O%で,その中の約80%近くがフィチン態リン酸である。このフィチン態リン酸は,豚や鶏などの非反芻家畜には消化分解できないために大量のリン酸が家畜排泄物として環境中に排泄されている。家畜におけるリン酸の吸収効率を高めるためには,家畜に吸収利用されやすいリン酸の形態にすることも一つの方法である。そこで,今年度は,広島県農業試験場で均一に栽培されたダイズ140品種を用いて,ダイズ子実の全リン酸,フィチン態リン酸濃度を測定して,フィチン態リン酸割合の低い品種の選抜を行った。その結果,供試品種の全リン酸濃度は5.45〜9.05mgP/g DWで大きな品種間差が見られた。また,フィチン態リン酸割合は,43〜80%で大きな品種間差がみられ,一部の品種ではフィチン態リン酸割合が低く,この品種を育種素材にすることによって,フィチン態リン酸割合の低い品種の育成も可能であることが示唆された。 一方,フィチン態リン酸の合成には,初発酵素であるmyo-inositol 1 phospahte synthase(MIPS)が重要な役割を行っている。そこで,昨年度,エンバクより単離したMIPS遺伝子(DDBJ : AB059557)を用いて,エンバクにおけるMIPS遺伝子の発現要因を解析した。MIPS遺伝子の発現は,開花後と未熟種子で見られたが,葉や茎では見られなかった。開花直後,糖濃度および無機リン酸の上昇とともにMIPS mRNAの発現が増大した。さらに開花後20日以降の子実成熟期にはMIPS mRNAの発現は減少していったが,フィチン酸濃度およびCa濃度の上昇が見られた。以上のことから,種子成熟過程後期には,MIPS以外のphospahte kinaseがフィチン酸合成に深く関わっていることが示唆された。
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