2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13670006
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井関 尚一 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50167251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若山 友彦 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (70305100)
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Keywords | 顎下腺 / 分化 / シグナル伝達 / CREB / JunD / アンドロゲン |
Research Abstract |
1)顎下腺腺房系におけるシスタチン遺伝子発現誘導へのテストステロンの影響 シスタチンSは顎下腺の腺房細胞から分泌される蛋白質分解酵素阻害物質である。シスタチンS遺伝子はサイクリックAMP反応部位(CRE)を上流に持ち、特異的な結合蛋白質(CREB)を転写因子とする発現調節を受ける。CREBはβアドレナリン作動性物質の膜受容体への結合によるサイクリックAMP上昇により活性化するので、シスタチンS発現は神経性の調節を受けていると考えられる。ところが下垂体切除ラットにβアドレナリン作動性物質であるイソプロテレノールを投与した場合、シスタチン遺伝子発現誘導は正常ラットよりもはるかに低かった。下垂体切除ラットに各種のホルモンを補充したところ、イソプロテレノールによるシスタチン遺伝子発現誘導が回復し、その効力はテストステロン、甲状腺ホルモン(T3)、エストラジオール、デキサメサゾンの順に強かった。この結果は、顎下腺腺房におけるシスタチン遺伝子誘導に関して、これらホルモンの核内受容体によるシグナル伝達と、サイクリックAMPによるシグナル伝達との間に相互作用があることを示唆した(論文準備中)。 2)顎下腺導管系における顆粒性導管細胞分化へのテストステロンの影響 転写因子AP-1複合体の要素であるJunDのマウス顎下腺における発現を局在を、抗体を用いた免疫ブロット法と免疫組織化学により研究した。JunDは雄マウスより雌マウスの顎下腺ではるかに豊富に発現し、導管系に局在した。導管系においてJunDは介在部および線条部遠位の細胞の核に局在したが、雄マウスで発達している顆粒性導管細胞の核には存在しなかった。生後発達において、雄マウスの顎下腺で4〜5週にかけて線条部導管から顆粒性導管が分化するのにともなって、それらの核からJunDが失われた。雌マウスにテストロンを投与して導管系の分化を誘導するとJunD陰性だった線条部の細胞の多くに投与後6時間から24時間にかけて一時にJunDが発現し、それらが顆粒性導管細胞に分化した48時間後には消失した。この結果は、マウス顎下腺の導管系の分化にJunDが関与すること、JunDを含む転写因子AP-1複合体とアンドロゲン/アンドロゲン受容体系との間でシグナル伝達の相互作用があることを示唆した(論文準備中)。
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