2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13670051
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes, National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
SABIROV Ravshan 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (60322632)
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Keywords | ATPチャネル / アニオンチャネル / 細胞容積 / ATP放出 / CFTR |
Research Abstract |
ATPは細胞内にmMオーダー存在し、刺激に応じて(細胞傷害なしに)細胞外へと放出され、オートクリン・シグナルやパラクリン・シグナルとして働【approaches】【approximately equal】【table】き、多くの生理学的過程に重要な役割を果すことが知られている。それらの非細胞傷害的ATP放出をひきおこす刺激のうちで、多くの細胞で最も有効なものは浸透圧性細胞膨張である。この形質膜におけるATP放出の経路の侯補としては、(ミトコンドリアATP-ADP交換体のような)トランスポータや(ミトコンドリアVDACのような)ATP透過性チャネルや、(神経シナプス終末と同様に)エキソサイトーシスを介するものが考えられる。ATPは生理学的pH領域においては殆どは3〜4価のアニオンとして存在するので、私達はまずATP伝導性チャネルの可能性を想定して研究を行ってきた。その結果、ごく最近、ATP伝導性の新しいタイプのアニオンチャネルを発見した。そこで本研究を、(1)この新しいATP伝導性アニオンチャネルの性質を詳しく調べ、(2)このチャネルが細胞膨張誘起性・CFTR依存性ATP放出路そのものであるかどうかを明らかにし、更には(3)このチャネルの分子実体を同定すること、の三点を目的に行いたい。ATP放出経路の実体については現在、世界的な論争と同定競争のさなかにあるが、本研究によってこれに決着をつけると共に、「ATPチャネル」という新しい概念を提出したい。 昨年度はマウス乳腺上皮由来C127細胞のATP伝導性マキシアニオンチャネル(ATPチャネル)の性質を詳しく調べて、その薬理的性質が細胞膨張時ATP放出のそれに一致することを示した。本年度は、アラキドン酸が本チャネルを直接的に抑制することを示し、その濃度依存性もATP放出への抑制効果とよく一致することを明らかにした。その他の脂肪酸に対する感受性も、ATPチャネルとATP放出でよく一致することも示した。更には、本チャネルの分子実体を求めるための研究を開始した。まずはじめに、本チャネルの性質に似たミトコンドリアVDACの形質膜イソフォーム(pVDAC)の関与を調べた。C127細胞の形質膜には事実pVDACが発現していることが確認された。しかし、ATPチャネル活性を持たないHEK293細胞にpVDACを強制発現させてもATPチャネル活性は見られなかったので、本チャネルの分子実体とは結論できないことが判明した。次に、ミトコンドリアATP-ADP交換体の関与を考え、このブロッカーであるatractylosideやbongcrekic acidがATPチャネル活性をも抑制するかどうかを検討したが、著しい効果は見られず、これも本チャネルの分子実体とは考えにくいことが判明した。
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[Publications] Dutta AK, Okada Y, Sabirov RZ: "Regulation of an ATP-conductive large-conductance anion channel and swelling-induced ATP release by arachidonic acid"J.Physiol.(London). 542. 803-816 (2002)
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[Publications] 岡田泰伸, サビロブ ラブシャン, 清水貴浩: "クロライドチャネルの新しい機能 : ATP放出と細胞死誘導"生体の科学. 53. 323-330 (2002)