Research Abstract |
ヒトにおける交感神経活動は,末梢神経中において直接観察することが可能となり,筋支配の交感神経活動,筋交感神経活動(MSNA)と皮膚支配の交感神経活動,皮膚交感神経活動(SSNA)がある.MSNAは,骨格筋内細動脈の括約筋を支配し,血圧調節に重要な役割を果たす.また,血圧低下に対し賦活化,上昇に対し抑制され,圧受容器反射の支配下にあるとされている.一方,SSNAは,汗腺と皮膚血管の括約筋を支配し,体温調節に重要な役割を果たす.この両者において交感神経の中枢性支配があるとされ,ストレス,情動により両交感神経活動は増加するため,MSNAとSSNAには共通部分があると推測されている.体温調節能には暑熱反応と寒冷反応があり,暑熱反応に関しては,発汗機能皮膚血管拡張などにより対応し,寒冷反応に関しては,皮膚血管収縮,ふるえ,代謝亢進などにより反応する.そこで,安静時における共通性の探索より,このような環境温が変化したことによる体温変化時における検索によった解析を行えば,MSNAとSSNAの共通性,相違性が,より明確化する,換言すれば,交感神経活動の地域性がそれぞれ不明瞭化あるいは反対に明瞭化することが予測される.そこで,本年度の研究においては,寒冷曝露を核温変化より生じせしめ,その下降・上昇時におけるMSNAとSSNAの時系列解析を行うための基礎実験として両者の同時記録,中立温・安静時における両者の比較を行った.その結果,両者間には,呼吸の成分のリズムが存在することが判明した.さらにSSNAと核心温との記録をもとに両者間には約8分の時間差が存在することが明らかとなった.これはSSNAにおけるさらに長い周期を示唆するものであり,寒冷曝露時における血管収縮を司るSSNAの重要性が強調された.
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