2003 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺腫瘍、特に乳頭癌の予後因子に関する分子病理学的検討
Project/Area Number |
13670175
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
廣川 満良 徳島大学, 医学部, 助教授 (80173277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀口 英久 徳島大学, 医学部, 助手 (40304505)
佐野 壽昭 徳島大学, 医学部, 教授 (80154128)
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Keywords | 甲状腺 / 乳頭癌 / 大腸ポリポーシス / APC遺伝子 / βカテニン |
Research Abstract |
現在、甲状腺の乳頭癌には種々の亜型が報告されているが、各々が独立した疾患概念として認められるべきか否かは未だ十分に解析されているとは言いがたい。甲状腺乳頭癌が家族性ポリポーシスに合併することは古くから知られているが、近年その組織像や免疫組織化学的染色結果の特徴が次第に明らかになりつつある。家族性ポリポーシスに合併する甲状腺乳頭癌は、圧倒的に女性に多く、組織学的に篩状構造、morules形成、ビオチン含有淡明核などが特徴的である。免疫組織化学的にも、βカテニンが核にも陽性を示すことが特異的であり、さらに、estrogen receptorやprogesterone receptorも陽性でもある。この亜型はcribriform-morular variantと呼ばれており、ポリープが出現する前に甲状腺腫瘍が発見される場合もある。しかし、この組織型はポリポーシスを有さない症例でも出現することがあり、この亜型APC遺伝子の胚細胞変異を有しているのか、あるいは体細胞変異を有しているのかはその発生に関して非常に興味深い。我々はこのcribriform-morular variantの5症例を集めて検討した結果、1例のみしかAPC遺伝子異常を有しておらず、5例全例がβカテニンの遺伝子異常を有していることを明らかにした。また、これらの腫瘍では、特に、morulesにおいて、アポトーシスを抑制するbcl-2の過剰発現がみられることを明らかにした。これらのことから、cribriform-morular variantは、bcl-2の過剰発現により細胞の寿命が長くなり、そのことによって遺伝子異常の起こすチャンスが増加した細胞に、βカテニンの遺伝子異常が起こることにより発生すると推測される。我々は現在、この研究結果を報告する準備している。
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