2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13670189
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池田 栄二 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30232177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 保典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00115221)
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Keywords | 糖尿病 / 網膜症 / 血管新生 / 低酸素 / VEGF / MMP / グリア細胞 |
Research Abstract |
糖尿病網膜症患者の視力予後を左右する増殖期への移行は、網膜から硝子体に及ぶ血管新生病変である線維血管性組織の形成を特徴とする。昨年度までの我々の研究成果から、網膜グリア細胞がVEGF(特にisoform VEGF_<165>)を産生しつつ、MT1-MMPを発現しMMP-2を活性化して基底膜組織を分解し硝子体腔へと遊走することが線維血管性組織形成を誘導していることが示唆されている。今年度は、糖尿病網膜症増殖期患者から手術的に切除された線維血管性組織の解析とともに、網膜グリア細胞培養系を用いVEGF、MT1-MMP産生誘導機構の解析を行った。線維血管性組織における転写因子hypoxia-inducible factor 1(HIF-1)の発現について免疫組織化学的に検索したところ、網膜から遊走したグリア細胞の核に陽性所見が得られた。HIF-1はVEGF遺伝子をはじめとした種々の遺伝子の低酸素刺激による転写亢進を制御する因子であり、線維血管性組織内グリア細胞の核へのHIF-1の局在は低酸素刺激が病変形成の誘因として働いている可能性を示唆するものと考えられた。そこで、家兎網膜を用いた網膜グリア細胞の単離・培養系を確立し、低酸素条件下での培養を行いVEGFおよびMT1-MMPの発現につき検索を加えた。その結果、低酸素刺激によりグリア細胞にVEGFとともにMT1-MMPの発現が誘導されることを見出した。誘導されるVEGF isofomは主としてVEGF_<165>であった。VEGF_<165>とMT1-MMPは、線維血管性組織の解析を通じて特定された血管新生活性および基底膜分解活性の責任因子であり、網膜局所の虚血による低酸素状態がこれらの因子の発現誘導を介して線維血管性組織の形成、即ち病期を増殖期へと移行させる誘因となっていることを示唆する知見と考えられた。
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Research Products
(1 results)