2001 Fiscal Year Annual Research Report
食道扁平上皮癌および境界病変における遺伝子異常の解析とその遺伝子診断への応用
Project/Area Number |
13670196
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
原岡 誠司 福岡大学, 筑紫病院, 助手 (40251053)
|
Keywords | 食道 / 扁平上皮癌 / 病理学 / 多発表在癌 / p53遺伝子異常 / loss of heterozygosity (LOH) / microsatellite instability (MSI) / replication error (RER) |
Research Abstract |
食道扁平上皮癌の手術症例222例(1987〜1998年)の中から、術前未治療の多発表在癌5例を対象とした。ホルマリン固定切除標本を全割し、病理組織学的に認めた扁平上皮癌(SCC)、Dysplasia、basal cell hyperplasia(BCH)の領域と正常粘膜の計38箇所から、microdissection法を応用してDNAを抽出した。P53蛋白の発現、p53遺伝子変異、loss of heterozygosity(LOH)、および遺伝子不安定性(RER)に関し、各病変において検討した。 【結果】1.P53免疫染色では、SCCはびまん性或いは巣状に発現を認めたが、DysplasiaやBCHでは部分的に或いは散在性に陽性細胞を認めた。一部の正常上皮では基底細胞に陽性であった。P53蛋白の発現とp53遺伝子変異との相関性は認めなかった。 2.p53遺伝子の点突然変異を全ての検索領域の28.9%(11/38)で認めた。全症例において、exon 8,codon 273の接合変異を検出し、それはSCC(4例)以外にBCH(2例)や正常粘膜(2例)においても見られた。更に1つの腫瘍内において、点突然変異がある領域と遺伝子異常の無い領域が混在するp53遺伝子異常の不均一性を、3例で認めた。 3.LOHでは、p53が83.8%、D2S123が65.4%、D3S1611が71.4%と高率であった。p53遺伝子の接合変異(exon 8,codon 273)が見られた9領域のうち7領域にp53のLOHを認めた。LOHの頻度を癌部と非癌部で比較すると、p53とD2S123のLOHはほぼ類似した頻度であった。 4.RERは正常粘膜を含め全ての領域で検出し、36領域(36/38)がHigh-level MSIであった。 【まとめ】1.癌病変のみでなく非癌部においてもp53遺伝子の接合変異とともにLOHを認めた。p53遺伝子異常は、食道扁平上皮癌の多段階及び多発発癌機序において、その早期に重要な役割を担う遺伝子異常のひとつである事が示唆された。 2.遺伝子不安定性及びミスマッチ修復遺伝子異常は、癌部、非癌部とも高頻度に認め、表在型食道扁平上皮癌が多発性に発生することについての遺伝子学的な裏付けのひとつになると考えられた。
|