2002 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアの遺伝子変異と循環器疾患との病理学的研究
Project/Area Number |
13670234
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
自見 至郎 福岡大学, 医学部, 助手 (30226360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久野 敏 福岡大学, 医学部, 助手 (80156588)
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Keywords | ミトコンドリア / mtDNA / 遺伝子欠損 / 腎臓 / 老化 |
Research Abstract |
ミトコンドリアは細胞内エネルギー産生器官とし働き、核とは独立したミトコンドリアDNA(mtDNA)を持ち、その遺伝的変異により様々な疾患を起こすと考えられている。その変異は加齢的・疾患特異的な変異とし研究されてきているものの、mtDNA変異の増加・蓄積のメカニズムなどいまだ不明な点も多い。我々は慢性病の中心臓器となる腎臓に着目し、腎性高血圧に伴う硬化などの病理形態的変化とmtDNA変異、特に加齢に伴う欠損(del4834bp)との関係を解明することを本年度の研究の目的とした。その為、若年ラット(8週令)および高齢ラット(60週令)を用い、片腎摘+2/3腎梗塞の処置を施し、高血圧・腎不全の状態下で3ヶ月間飼育し、残存腎組織内mtDNA変異を比較検討した。モデル作成後、両ラット処置群とも、1)血圧は200mmHg前後にまで上昇し、2)腎不全状態を呈し、3)腎組織は糸球体硬化の進行と尿細管上皮細胞の萎縮と尿細管の拡大、間質線維化も進行した。4)ミトコンドリアの主要蛋白であるチトクローム酸化酵素活性は、対照群に比べ処置群で約40%にまで減少していた。しかし、若年と老齢ラット間には大きな差は認められなかった。若年ラットでの腎皮質内mtDNA欠損は微量で、処置により増加しなかった。高齢ラットでは処置前後でmtDNA欠損は増加していたが、加齢による変化と変わらなかった。細胞の再生能不全により発現する物質(SA-β-gal)は、無処置の若年・老齢ラットとも尿細管上皮細胞内にも少量認めたものの両者間に差はなかった。処置群でのSA-β-galは同上皮細胞内に多く発現したが、両群間に差はなかった。以上より、高血圧による腎機能障害のメカニズムに、加齢に伴うmtDNA欠損(del4834bp)は関与しないと考えられた。
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