2003 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアの遺伝子変異と循環器疾患との病理学的研究
Project/Area Number |
13670234
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
自見 至郎 福岡大学, 医学部, 助手 (30226360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久野 敏 福岡大学, 医学部, 助手 (80156588)
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Keywords | mtDNA / 遺伝子欠損 / ミトコンドリア / 2型糖尿病 / 腎臓 |
Research Abstract |
ミトコンドリアは細胞内エネルギー産生器官として働き、核とは独立したミトコンドリアDNA (mtDNA)を持ち、その遺伝的変異により様々な疾患を起こすと考えられている。その変異は加齢的・疾患特異的な変異とし研究されてきているものの、mtDNA変異の増加・蓄積のメカニズムなどいまだ不明な点も多い。我々は慢性病の中心臓器となる腎臓に着目し、腎症を伴う疾患の病理形態的変化とmtDNA変異、特に加齢に伴う欠損(del4834bp)との関係を解明することを目的として研究を行ってきた。そのため最終年度は、2型糖尿病モデル(OLETF)ラットを用い検討を行った。OLETFとその対照ラットLETOを用い、腎病変の進行、ミトコンドリア内チトクローム酸化酵素(COX)、細胞の再生能不全により発現する酵素(SA-β-gal)および腎皮質内mtDNA欠損について検討を行った。OLETFは年齢の進行とともに、血中インスリン濃度は増加し、いわゆるインスリン非依存性糖尿病の病態を示し、腎糸球体内病変、間質障害も増悪し、炎症細胞浸潤、間質線維化も出現した。OLETFは肥満し、血清コレステロール、中性脂肪も明らかに増加し、血清過酸化脂質(MDA)も増加した。BUNも上昇し、蛋白尿・アルブミン尿ともOLETFで明らかに増加し、糸球体機能も低下した。腎皮質内MtDNAの欠損(del4834bp)もOLETFで多く認められた。腎皮質内SA-β-galもOLETFに多く、主に尿細管上皮細胞に認められた。以上より、OLETFでは腎病変の進行とともに、ミトコンドリア遺伝子欠損が蓄積することが示された。細胞の老化時に発現するSA-β-galが尿細管上皮に認められたことは、組織再生が障害されていることを示し、ミトコンドリア遺伝子蓄積をさらに増悪させる可能性も示された。しかし、ミトコンドリア遺伝子変異が腎機能低下の直接的原因となるのか、なお不明である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Jimi S, Uchiyama M, Takaki A, Suzumiya J, Hara S.: "Mechanisms of cell death induced by cadmium and arsenic"Ann NY Acad Sci. 1011. 325-331 (2004)
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[Publications] Takaki A, Jimi S, Segawa M, Iwasaki H.: "Cadmium-induced nephropathy in rats is mediated by expression of senescence-associated beta-galactosidase and accumulation of mitochondrial DNA deletion."Ann NY Acad Sci. 1011. 332-338 (2004)
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[Publications] Takebayashi S, Jimi S, Segawa M, Takaki A.: "Mitochondrial DNA deletion of proximal tubules is the result of itai itai disease"Clin Exp Nephrol. 7. 18-26 (2003)