2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13670258
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
藤田 修 国立感染症研究所, 獣医科学部, 研究員 (20260276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 智義 国立感染症研究所, 寄生動物部, 室長 (60198588)
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Keywords | Echinococcus / multilocularis / 抗酸化酵素 / 2-Cys peroxiredoxin / レドックス制御 / MFO assay |
Research Abstract |
ヒト多包虫症は潜伏期が長いのが特徴で臨床症状が現れてからの治療は困難を極める。その為にも早期診断法・新規治療法の開発につながる寄生虫特異的な分子およびその機能の解析が急務である。 我々はスナネズミ由来の多包虫組織から作製したcDNA発現ライブラリーを、多包虫患者血清を用いてスクリーニングし新規タンパク質、ペルオキシレドキシン(Prx)cDNAを得た。Prxはプロトン供与体の存在下でペルオキシダーゼ活性を示すタンパク質で、活性部位のシステイン(Cys)を中心とするドメインの個数によって、1-Cys型と2-Cys型に分類される。 我々が得た多包虫Prx遺伝子のコードするタンパク質の推定分子量は約21kDaで、アミノ酸配列の48および169番目にはPrx群で保存されているシステイン残基が認められた。このPrxのORFを発現ベクターに挿入し、大腸菌で組換えPrxタンパク質(EmPrx)を作成・精製し、その生化学的機能を検討した。 Thiol mixed-function oxidation (MFO) assayによりプラスミドDNAに対するハイドロキシラジカルによる損傷を阻止する酵素活性が認められた。次に、EmPrxの過酸化水素に対する還元活性をチオレドキシンを用いて調べた。その結果、EmPrxはチオレドキシンを電子供与体としてチオレドキシンペルオキシダーゼ活性が確認された。 多包条虫はその生活環を通して、外界あるいは中間宿主免疫系由来の活性酸素種に起因する酸化ストレスに曝されている。それらストレスから回避する目的でPrxが多包虫の抗酸化機構に重要な役割を果たしていると思われる。この知見は寄生体の生物学的特性を利用したワクチン・創薬の新しい防御技術の開発の為に有益であると思われる。
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