2001 Fiscal Year Annual Research Report
火災被害者における血中シアン濃度の法中毒学的および臨床中毒学的意義に関する研究
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13670426
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
守屋 文夫 高知医科大学, 医学部, 助教授 (40182274)
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Keywords | 法中毒学 / 臨床中毒学 / シアン / 血中シアン濃度 / 火災被害者 / メトヘモグロビン / 一酸化炭素ヘモグロビン / 気化平衡ガスクロマトグラフィー |
Research Abstract |
火災被害者の血中シアン濃度に及ぼすメトヘモグロビン血症と死後経過時間の影響を明らかにすることを目的とした。ペントバルビタールナトリウムで軽度に麻酔したウサギに3%亜硝酸ナトリウム(A群,n=3)または生理食塩水(B群,n=6)0.33ml/kgを耳静脈内に投与し、その5分後に2%シアン化カリウム1ml/kgを筋肉内注射して死亡させた。シアン化カリウムを投与する直前におけるA群およびB群の平均メトヘモグロビン量はそれぞれ6.9および0.8%であった。死亡時の平均心臓血中シアン濃度はそれぞれ47.4および3.56mg/lであった。死亡したウサギ(B群ではn=3)について、周囲の大血管を結紮後摘出した心臓を46℃に1時間、20-25℃に23時間、更に4℃に48時間放置したところ、24時間内に心臓血中シアン濃度がA群で85%、B群で46%低下した。しかし、72時間後においてもそれぞれ初期濃度の10および37%に相当する量のシアンが残留していた。一方、B群の残りの心臓(n=3)を24時間以降も4℃に保存することなく20-25℃に放置したところ、実験終了時までにシアンほとんど完全に消失してしまった。火災被害者剖検15例の血中シアン濃度、一酸化炭素ヘモグロビン飽和度およびメトヘモグロビン量を測定したところ、死後経過時間が8〜24時間の事例(n=12)でそれぞれ0.14〜5.38mg/l、11.3〜86.4%および1.8〜6.60%、死後経過時間が2〜5日の事例(n=3)でそれぞれ0.01〜0.54mg/l、42.4〜84.2%および7.8%であった。死体の血中シアンは、環境温度が20℃付近では3日以内にほぼ完全に消失するが、4℃ではかなり安定であること、また火災被害者では燃焼ガスの吸入によりメトヘモグロビン量が上昇し、結果的にシアンの毒性が軽減される可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)